「エコ」には生活を我慢しなければならない、というイメージを持っている人も多いのでは。本当のエコは楽しくて贅沢なものだと語る、札幌市の果樹園でエコケータリングやワークショップなどを主催するビアンカ・フュルストさんにお話を伺ってきました。
ビアンカさんは、環境アドバイザーや環境カウンセラーよりも、美味しさや楽しさのヒントを伝えたいという思いから、エコソムリエという肩書を自分でつけたそう。深い環境の知識に裏付けられた楽しさを提供するということでもあるとか。
NPO法人 八剣山エコケータリング 代表 ビアンカ・フュルストさん
ビアンカさんが日本と関わるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
「高校のスポーツ交流で4週間ホームステイしたのが始まりです。その後、大学で日本政治を学び熊本大学へ留学して環境政治を学びました。」
ドイツといえば環境先進国というイメージがありますが、ビアンカさんがホームステイした場所は熊本の水俣。1950年代に、大きな公害問題があったところです。水俣の事例を学び、ドイツも日本から学べるところが多いと感じたそう。
「そして、熊本大学からドイツに戻り大学院で学びました。ドイツの日本大使館が札幌市役所の国際交流員の募集をしていたのを知って応募し、再来日することになりました。」
新しい国際交流のカタチって何だろうと考え、日本とドイツ共通の問題をテーマにしようと思ったそう。それは、エネルギーやゴミの問題など。仕事もシンポジウムや協議会に呼ばれ話す仕事が多くなっていきます。
「それでも15年前には、ドイツはいいね、でも日本では無理と言われました。電気は自分でつくれると言っても、こだわりのある趣味だね、と言われたんです。」
ビアンカさんは諦めず、ドイツにできるなら日本にもできるはず!と思っていたそう。
日本で結婚して、たまたま旦那さまの実家が果樹園でした。太陽光発電や太陽熱でお湯を作るソーラーコレクター、それらを利用したソーラークッキングなど、いろんな技術が果樹園に揃っています。
ビアンカさんが代表を務める「八剣山エコケータリング」は、果樹園で無農薬・減農薬でつくられた野菜を使ったエコケータリング、自然の木材などを使ったエコクラフトづくりと販売、ワークショップが行われています。
利益は、子供から社会人まで学べる環境教育へ。先生やJICA、シルバー大学の人たちまで、多くの人の学びの場になっています。エコエネルギーやクイズラリーなど、チームで一つのものを創りあげるための知識と行動力、勇気が試される、コミュニケーションスキルが学べるものです。
経営には、課題もあったと思います。
「初めは資金づくりが大変でしたが、それを乗り越えると、みんなの気持ちや意識が同じになっていくまで大変でした。エネルギーシフトは大丈夫なのだと、一人で盛り上がってしまっていたんです。」
ようやく2年ほど前から、スタッフの気持ちも一つになっていったとか。
さらに、ビアンカさんは3人のお子さまのお母さんでもあります。
「どの女性も同じだと思いますが、妥協や犠牲は発生します。でも親がずっとついていくより、寂しい思いもしたかもしれませんが、子どもがサバイバルしながら育っていく方がいいと思います。」
そして、何よりお子さまの成長と共に、自身のエネルギー教育の視点も変わっていきました。エネルギー教育は硬いものでも、知識を目指すものでないというヒントをもらえたと感じたそう。
「大人が子どもの心に戻る気持ち。心で感じることで意識が変わるのだとわかりました。」
遊び心が大人の教育にも必要だと。何かに夢中になること、工夫して、自分でチャレンジすることの重要性に気づきます。
「久しぶりに裸足になって、それまで格好つけて固かった表情が笑顔になって、笑い声が出るんです。笑い声が出たら成功です。」
「ソーラーの勉強になった」ではなく、ただ「嬉しかった、楽しかった」と感じることで、知識が違ったカタチに変化するようです。学ぶとは心が動いて気づくことだと、改めて感じました。地域で採れた食材を使い、ソーラークッキングでつくられたエコで贅沢な食べ物は、大企業の研修などでも人気だとか。
札幌を訪れたら、すべてソーラーでまかなわれている美味しくて楽しい体験をしに、果樹園に行ってみてはいかがでしょうか。
八剣山エコケータリング http://www.hakkenzan.jp/ecocatering/
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |