生きものと暮らすバイオフィリック。四季を楽しみ自然を愛でることを提案する「SiKiTO」

古くから親しまれてきた花をいける文化。「江戸時代に『生花」』が流行し、花をいけると言うようになった。そこには、花をいかす、人をいかす、環境をいかすといった意味が込められるともいえる」のだとか(参考:華道の現状と課題に対する 「いけばな療法」概念の革新性に関する実践的考察)。

 いまや日本の華道は衰退し、花の市場や産地は減っているそう。そんな時代の流れもあるなか、もっと新しいカタチで季節を感じてほしいと「株式会社TRINUS(トリナス)」から始められたのが「枝もの定期便」です。

 「株式会社TRINUS」が運営する「枝もの定期便」が利用できるサイト「SiKiTO」には、社会的な意味を押し付けるのではなく、思わず選びたくなるアイテムが揃っています。職人さんによってものづくりされたプロダクトやナチュラル・オーガニックなコスメやドリンクまで。ベースにあるのは生活の中で自然を親しみ楽しんで欲しいという思い。代表取締役の佐藤真矢(さとう しんや)さんへ、ライフスタイルに取り入れたい「季節」や「自然」について話をうかがってみました。


「株式会社 TRINUS」CEO 佐藤真矢氏

2014年に設立された「株式会社TRINUS」。前職でいろいろな産地を訪れていた佐藤さんは、地域には埋もれた資源がたくさんあることに気づきます。そこから何か面白いものが生まれるのではと感じたことが創業のきっかけに。

 「地方へ行くと、枝に咲く花は一番季節を感じるものだとわかります。都会の部屋で観葉植物を置くより、ずっと季節を感じられる。そんな素敵なところを手軽に取り入れていきたいと思って『枝もの定期便』をスタートしました。

 100cm程の枝ものは、気軽に買って帰るのが難しいですよね。『枝もの定期便』は、季節に合わせて桜やトウダンツツジ、野ばらなどを定期配送するサービス。枝をカジュアルに飾るスタイルをアピールしました。合わせて、自社のクリエイターと青山フラワーマーケットさんとで共同で開発した枝もの専用の機能性の高いフラワーベースや、ライフスタイル全般の商品もセレクトしていくと、自然とナチュラルやオーガニックのラインナップになりましたね」

コンセプトは自然を感じるバイオフィリック


4週と2週に1回から選べる「枝もの定期便(100cm程度)」
1回分の料金3,987円(税込)

コロナ禍の閉塞感があった3年間を経て、都心に木や植物がある建築物やオフィスインテリアが増えました。いわゆるバイオフィリックデザインといわれるもので、「人間は自然を好み、自然とつながりたい本能的欲求がある」という考え方に基づいたもの。「SiKiTO」は、このバイオフィリックを日々の生活に取り入れることを提案しています。

「バイオフィリックは建築の空間デザインの手法ですが、『枝もの定期便』はストレスが多い生活の中で自然を感じる空間を手軽につくりだすことができるものです。東京農業大学の先生にもお話をうかがったところ、ある程度植物がある環境で、人は最もリラックスできて生産性も上がるということでした。インテリアにあるものは、ほとんど直線と円形でできていますよね。人工的なものに囲まれた生活の中で、曲がったりくねくねしたりした有機的な枝や花、葉を見ると、ホッとしてもらえるもではないかと。さらに、香りもバイオフィリックにつながると思っています。僕たちはプロダクト的にもアプローチして、季節の香りを感じるルームフレグランスや入浴剤まで開発していく予定です」

 切り花と枝ものとの大きな違いは何でしょうか。

 「切り花は、人工的に栽培されているものが多いです。でも枝ものは、半分ぐらい山に自生しているもの! それを飾るので、本当に自然の一部を家に飾っていると感じます。日本のどこかにある四季の風景を取り込んでいる部分もありますね。より自然に近いし、季節を感じやすい。それに、サイズ的に大きいので空間的なインパクトがより強いかな」


生きものに活かされる

気枯れ(けがれ)という言葉がありますが、その由来は木枯れからだそう。

「けがれとはエネルギーを失ってしまった状態。木が枯れると生命力も失われてしまうんですよね。枝ものは、自然のまま生きている生物。生きものなので、多少手間もかかりますが、逆にそれがいい。木から生命力をいただいている側面もありますから。枝の説明シートを入れさせていただいていますよ。名前と産地、ちょっとしたストーリーや手入れの仕方などを記した紙を添えています」

生きものを育て、お世話をすることは、自分にエネルギーを与えてくれるものだと、改めて気づきました。

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3,190円(税込)

季節の行事も取り入れて、月見酒ならぬ「枝見酒」のシリーズもあります。落語の「花見酒」にインスピレーションを受けた企画。都会の大人をターゲットに季節ごとのお酒の提案もしていく予定だそう。

枝ものの生産者さんを訪ねるレポートも掲載される予定。さらに世田谷区梅丘で実店舗もオープンします。五感で楽しむ四季と、実りある時間。ライフスタイル雑貨も眺めながら、豊かに暮らしていきたいと感じました。

SiKiTO  https://sikito.com

企業情報

 

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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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