桃農家3代目の商品開発。農薬を使わずに栽培した規格外レモンでつくる「なんば農園のレモネード」

2024年から2035年までを対象期間とし、国民一人ひとりが健康で豊かな人生を送るために必要な取り組みを行う「健康日本21(第三次)」が示されました。日本政策金融公庫農林水産事業が実施した「消費者動向調査(令和61月調査)によると、食に関して健康志向が高い水準を示しています。

 そんな中で、とくに注目されている「国産レモン」。

 レモンは、ほとんどを輸入に頼っていますが、輸入品と比べて輸送時間が短く収穫後の防カビ剤を使わない国産品は、皮ごと食べる時の安心感につながり、年々引き合いが強まっています。国産レモンは、家庭用から加工品まで幅広い用途で年間を通して需要がある状況です(参考:日本農業新聞「農畜産物トレンド調査」野菜・果実のネクストヒットはこれ!)。

国産レモンと言えば広島瀬戸内レモンが有名ですが、岡山県倉敷市で農薬を使わず、自然に近い形でレモン栽培を始めた桃農家「なんば農園」をご紹介します。

安心な農産物の6次産業化を目指す挑戦

なんば農園 代表 難波頌治さん
銀行員だった岡山県倉敷市の白桃農家さん
60年以上の歴史を持つ、祖父の代から桃の栽培を始め3代目

「なんば農園」では、減農薬栽培の白桃と規格外の農産物を使って加工品がつくられていました。代表の難波さんは、6年間の銀行勤務を経て脱サラ。農家としては5年目だそう。

 祖父母亡き後、ご両親が懸命に守っていた農園が徐々に耕作放棄地へ変わっていったことが、農家を継ぐきっかけとなりました。

 レモン栽培を始めた理由には、銀行員時代に、レモンの名産地、広島県の支店に勤務することが多く、居酒屋のオリジナルレモンサワーなどレモンの魅力にはまっていたことがあります。特産レモンと地域とのつながりの深さを感じていたといいます。

 農家を継いでみると「多くの農家は労働集中期と収入時期が限られている」という課題を感じます。そこで、桃とは繁忙期が異なるレモン栽培を2019年からスタート。

 そして、本来廃棄される規格外レモンを使って「岡山県倉敷市産 レモネード」を完成させました!

レモネード 900mL:1,700円(税込)レモン果汁10%配合
化学的な香料や添加物に頼らず
こだわりのレモンとはちみつの自然な甘さ

なんば農園は、倉敷の玉島地域に広がる丘陵地帯にあります。倉敷市でも今年の暑さは記録的でした。

「今年のレモンは、昨年以上に苦戦しました。夏の少雨の影響で、小玉の果実が多く、また、カメムシ被害、猛暑の影響による生育不振、害虫被害で大量の規格外品が発生しています。農薬を使用していないので、ある程度は覚悟しているんですが…予想を上回る量の規格外レモンが採れそうです」

傷がないレモンはサイトなどで販売
注目のレモン水にも!

初代園主の栽培方法をそのまま受け継いだという難波さんですが、銀行員の経験は農園の運営に活かされています。

 先に「白桃甘酒」の開発に挑戦して「6次産業化」の難しさも実感したといいます。ビジネスとして栽培から加工、販売まで行わなければならないのです。

 「卸問屋、商社と商談をしていくと、概ね販売価格の60%で卸価格を要求されます。つまり40%の販売手数料がかかるんです。中間流通業者のビジネスモデルを勘案すれば、仕方ないことだとは思いますが、甘酒外注費や白桃栽培経費を考慮すれば、採算が合うどころか赤字になります。

 既存の流通に乗せるには大ロットかつ低価格でないと難しいと判断しました。私のような小規模農家では不可能です。それで、インターネット販売、朝市やマルシェ出店、産直市場へ出品、飲食店への営業などで地道に販路を開拓していきました」

 そうして販売実績をつくり、農業の6次産業化を進めていったそう。

アイスでもホットでも

「桃農家として長年培ってきた技術をレモン栽培にも応用しています。急斜面過ぎて、桃栽培には不向きとなって荒れ果ててしまった耕作放棄地をレモン畑として整備しました。

 水はけ、日当たり抜群な土地で高品質なレモン栽培に成功しました。もともと桃畑のところで育てるレモンはフルーティーな味わい。農薬は使用せず、堆肥のみ散布しています。ワックスや防腐剤、防カビ剤の使用もなく、自然に近い形での栽培を成し遂げました」

添加物を使用しない昔ながらの製造「白桃甘酒」

白桃甘酒900ml 3本入り:4,500円(税込)
米と米麴のみを使い、砂糖や添加物を一切使用しない昔ながらの麹の甘酒
甘酒製造でも歴史ある酒蔵「ぶんご銘醸株式会社」製造のオリジナル甘酒

白桃は水はけ良い山の斜面で、日当たり良好の土地ということもあり、高い糖度を実現・維持しています。減農薬栽培で規格外の桃でつくった無添加「白桃甘酒」は飲みやすいと人気です。

 ちなみに特産の桃は、「吉備丘陵の白桃」として、環境省の「日本のかおり風景百選」にも選ばれているほど。

開墾地の様子

今年は、新たに開墾した畑(2000㎡程)へ桃の苗木の植え付けが行われました。

 なんば農園では、農業の新しい可能性を追求しながら、地域とともに成長していくことを目指しています。

 「新たな地場産品として認知され、需要が高まれば増産ができます。増産可能になれば、自社の作物だけでは足りなくなり、地域の契約農家から仕入れる必要性も出てくるかも知れません。

 畑の面積を拡大し、更なる雇用が必要になる可能性もあります。少しでも地元農家の力になったり、地元の経済に貢献したりと、地域とともに成長していきたいと思っています」

 森のキャビアと言われる高級柑橘「フィンガーライム」の栽培も予定しているそう。小規模農家さんによる、農業の6次化は難しいのが現状です。銀行員の経験を持つ難波さんの挑戦は、食品ロス削減につながり未来の農業を明るくしてくれるもの。その新たな挑戦を応援していきたいと思います。

 なんば農園  https://nanba-nouen.com/

 

 <レモネードのクラウドファンディングにも挑戦中>
※返礼品には白桃甘酒とのセットもあります

プロジェクト名:60年続く岡山の桃農家、3代目が切り拓く未来:
 レモン栽培と特製レモネードへの挑戦
期間: 2024129()5:002025225()23:59

 CAMPFIRE」クラウドファンディングサイト
https://camp-fire.jp/projects/790605/view?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show

 
企業情報

 

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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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