明治時代には世界一のシルクの輸出国だったという日本。現在では化学繊維が増え、シルクの服を身に着ける機会も減っているのが現状。国内の繭生産では、高齢化による養蚕農家の減少や桑葉の農薬の影響も報告されています(参考:カイコに対する農薬の残留毒性)。そんな背景から、サステナブルな高付加価値のシルク繊維が誕生しました。
1924年創業のシルク専門商社「丸八生糸株式会社」から、GOTS認証を取得したオーガニックシルクの原料ブランド「CONSCIO™(コンシオ)」を立ち上げられたのです。GOTSは、有機栽培(飼育)の原料を使用し、すべての工程で環境と社会に配慮されて加工・流通していることを示すマーク。※国際認証
カイコは、5000年以上も前の中国で、蛾の仲間「野生のクワコ」を品種改良し、飼いならしてつくりあげた昆虫(参考:伊丹市昆虫館 いたてんニュース)。カイコが生み出すシルクは、吸湿性や放湿性など、たくさんのメリットを持つ優れた天然繊維です。
カイコは家畜化された昆虫
シルク繊維業界で始まったグローバルな取り組み
和装分野向けに生糸や絹製品を販売している「丸八生糸株式会社」。経営企画室室長の塩尻雄亮(しおじり ゆうすけ)さんによると、CONSCIO™の立ち上げは、国内だけでなく海外へも販路をひろげようと模索していたことから。塩尻さんは「欧州など海外ではGOTS認証の生糸が求められていると知りました」と語っています(参考:繊研新聞社「ファッションとサステナビリティー」)。
CONSCIO™というブランド名は、Conscious(コンシャス)の語源であるラテン語で、環境意識や倫理観、時代を先取る感度の追求という意味が込められているそう。CONSCIO™で取り扱うシルクは、GOTS認証を取得したオーガニックシルクに限定しています。
撚糸に付けられたCONSCIO™マーク
除草剤や農薬、化学肥料を使わず、有機栽培された桑の葉だけをカイコの餌に使う「有機養蚕」。そして2022年3月には、オーガニックシルクに約10年取り組み、欧米での存在感を高めているタイの製糸工場と国内独占流通契約を締結。土壌・水質汚染などの環境負荷を低減し、GOTSが定める厳しい基準をクリアして生糸がつくられます。
オーガニック認定工場
課題は供給量を安定させることだそう。オーガニックシルクはすべての工程で手間と時間がかかるため、生産効率は低下。GOTSで定められたルールの順守とトレーサビリティーのため、バリューチェーンで厳格な管理が求められます。現在、安定供給の観点から、販売先は1産地、1業種、1社に絞られています。
美しい繭
取り分け丁寧に生成されているCONSCIO™。さらにエシカルでサステナブルなシルクは、一定のプレミアムな価格で販売されています。意識次第で、価値は変化するもの。CONSCIO™の認証マークは、何を大切にするのかを考えるきっかけを与えてくれそうです。
CONSCIO™ https://www.conscio-organicsilk.net/
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |