5.オーガニック・自然化粧品の今後チャネルの拡張性
最近は、冒頭でも述べたとおり新たなブランドや製品の市場参入が続いている。植物原料でありながら、化粧品としてアンチエイジングなどの機能性を訴求した製品や、真面目で新しさや面白みのない製品の多かったオーガニック・自然化粧品の中で異彩を放つ新しいブランドなどである。
そして、それらは日々プレスリリースされて雑誌に掲載され、日本で自然化粧品類を扱う店舗のバイヤーなどに紹介されお店に並んでいく。その中で、今日本のオーガニック・自然化粧品売場は混沌とした状況になりつつある。日本の市場において、オーガニック・自然化粧品を扱う売場は現状では数が限定されている。直営店を出せる資力とラインナップのあるブランド以外は、百貨店の一部のセレクトされたコーナー、オーガニック・自然化粧品のセレクトショップ、一部の雑貨店やアパレルショップ、そして通販などにて取り扱われている。その限られた売場に、新規参入のブランドと会社の営業が殺到している。そして、売場には多種多様な製品が溢れ、並べる場所がなくなってきている。
現在は、海外ではスーパーマーケットのセルフ棚で大量に売られているブランドが「舶来品」として、また日本では高級ラグジュアリーブランドと位置づけてプロモートし、百貨店やセレクトショップの棚で美しく飾られ売られている。オーガニック・自然化粧品が従来までの珍しいものでなくなりつつある今後、内外価格差と同じようにそれぞれのブランドの本来のステージに合わせた、本国でのチャネルと同じような日本のチャネル展開に近づいていくものと思われる。今後日本に流入し続ける多くのブランドはその本来のステージに合わせて、海外でもセレクトチャネルで扱われているものは日本でも同じようなセレクトチャネルで展開され、海外では量販店で展開されているブランドは今までの限られた日本のセレクトチャネルの枠を超えて欧米と同じように日本でもドラッグストアやスーパーのような量販店への展開に活路を見出していくものと考えられる。
6.大きな市場での挑戦と今後の可能性本物のみが成功できる時代に
オーガニック・自然化粧品の市場は伸びているといっても、2兆円を越す日本の化粧品市場から見れば各社の売上げを合計してもほんの小さなものである。しかし、時代の流れはナチュラル志向に向いており、それが逆行するということはあまり考えられない。今後、この大きな市場で、多くのプレイヤーが力をあわせながら競争し生き残っていくことになるが、各社様々な課題を抱えながら真摯にスピードを持って取り組んでいく必要がある。後数年で、オーガニック・自然化粧品というものは、一般化粧品と境目がなくなりごく当たり前のポジションになっているものと考えられる。現在は、時代の一つの最先端を進んでいるオーガニック・自然化粧品を扱う企業も事業の本質を見つめ、多くの中から一歩抜き出る動きをとっていく必要がある。これからは、今までのようにニッチマーケットでの限られたプレイヤー同士の勝負というわけにはいかない。また競争は国際間となっており、今までのように海外で売っているブランドを日本市場に持ち込んだだけで、必ずしも日本市場での成功を得られるものではない。消費者もバイヤーも目が肥えてくれば、目新しさだけでは動かすことが出来ず、ブランド・製品の真価が問われていく時代となるであろう。ブームとなった日本市場においてはもはや数多のブランドが市場にあり、今後もあるブランドの成功を追いかける新しいブランドが限りなく増え続ける。この激しい競争の中で勝ち残っていくためにはしっかりとした戦略の立案と実行が成功のために不可欠なこととなる。
ターゲット、ニーズ、独自能力を軸とした商品・ブランドコンセプトの明確化、伝えるためのコミュニケーション戦略、そして消費者に届けるために最適なチャネル戦略と、付加価値を生み続けるブランドマネジメント等々。これらを社内外のパートナーと組んでじっくりと考え、それぞれの打ち手をオーケストラの指揮のようにタイミングよく繰り出していける企業・ブランドのみが大勢の中から抜け出し、輝きを放つことができる。そして限りなく大きいこの市場で、同カテゴリー市場が急激に拡大している分、自社の成功も非常に大きいものとなるであろう。
出典:BioFach Japan 2009 公式ガイドブック
執筆者:手島 大輔
PROFILE:
(株)トライフ 代表取締役 障がい者支援団体セルザチャレンジ代表 中小企業診断士
トーマツコンサルティング(株)等の勤務を経て、2005年にベンチャー企業にてオーガニックコスメブランド「アグロナチュラ」の立上げを行う。ゼロベースから発売後9ヶ月に市場価格で約10億円の売上の日本を代表するオーガニックブランドとする。2006年独立。複数のブランドプロデュース、コンサルティング、OEM生産受託、世界中のオーガニック植物原料の輸入販売事業を行う。2009年障がい者自立支援団体「セルザチャレンジ」の立上げを行い福祉とビジネスの融合に向けた社会起業活動も開始。
(株)トライフ ホームページ URL:https://sites.google.com/site/trifeinc/
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