昨年秋、GONは、オーガニックEXPOの場でBDIIH(ドイツ化粧品医薬品商工連盟)のローランド・グランデル博士(写真下)を日本オーガニックコスメ協会(JOCA)代表の水上洋子さんとともに訪問し、コスモス基準の現状と今後についてインタビューをいたしました。
以下、日本オーガニックコスメ協会ご了承のもと、Isisオーガニック生活便最新号に掲載されたインタビュー内容をご紹介いたします。
認証マークの表示について
JOCA
今、日本でもエコサートやBDIHの認証を取得する化粧品会社が増えてきているのですが、すでに取得した認証は今後どうなるのか、という話題がよく出ます。たとえば企業から「現在、エコサート認証を取得しているが、コスモスに変えねばならないのか」と言った質問が日本オーガニックコスメ協会にも増えています。そこでまずコスモス基準は、いつから統一基準として施行するのかということをうかがいたいのですが。
グランデル
以前は2015年からと公表していたのですが、少し延期されて、2017年1月1日からということになりました。これ以降は、新製品については、五つの認証団体が足並みを揃えて、すべて同じコスモス統一基準で認証することになります。
JOCA
そのさい、実際に製品につけられる認証マークはどのような形になるのですか。たとえば従来の五つの認証団体のマークは消えて、新たなコスモス認証マークのみになるのですか?
グランデル
いいえ、従来の五つの団体のマークはそのままの残り、その下にコスモスのマークが付加される形になります。
JOCA
たとえば従来エコサート認証を取得していた製品は、2017年から新たにコスモス認証基準で取り直さなければいけないのですか?
グランデル
いいえ、そのメーカーがエコサート認証でいきたい場合は、そのまま使い続けてもかまいません。あるいは、新たにコスモス認証マークがついたエコサート認証を取得したい場合は、コスモス統一基準の認証に合わせて、成分をリニューアルをすることによって、新たなマークを取得することもできます。
JOCA
ということ2017年以降もエコサートのみの認証マーク製品と、コスモスがついたエコサート認証マークが併用されるということですね。
グランデル
そうです。ただし繰り返しになりますが、2017年以降の新製品については、すべてエコサートマークにコスモスが付記した、統一の認証基準マークになります。
使用を禁じる動物由来成分について
JOCA
コスモス基準では動物由来成分についてはどのように定められていますか?
グランデル
動物によって分泌された物質は認められています。たとえば牛乳やハチミツです。しかし脊椎動物を殺傷して得られる成分については、使用が禁じられています。たとえばミンクオイル、動物の油脂、コラーゲン、生細胞などです。
JOCA
日本では、伝統的な動物由来成分として、馬油を使っている自然化粧品メーカーも少なくないのですが、こうしたものは、コスモス基準ではNGですね。
グランデル
その通りです。ヨーロッパの自然化粧品業界では、環境保護とともに動物愛護の精神が普及しているため、早くから化粧品の動物実験や実験を委託することもまた禁止されています。
コスモス基準のオーガニックとナチュラル、二つの認証の違い
JOCA
コスモス統一基準には、コスモス・オーガニックと、コスモス・ナチュラルの二つの基準がありますね。
グランデル
コスモス・オーガニック基準は、水と鉱物を除き、アイテムによって定められた成分のうち、95%以上がオーガニックでなければならないという基準があります。いっぽうコスモス・ナチュラル基準は、原料がオーガニックであるかどうかは問いません。
「使用可」とされる石油系合成成分について
JOCA
日本の一般消費者は、ヨーロッパの認証基準は、石油系成分はすべて使用禁止と考えている人が多いのですが、その通りでしょうか?
グランデル
コスモス基準では、石油系合成成分は、一部、「使用可」としています。これらの成分として雑菌の繁殖を抑えることを目的としている合成防腐剤などがあります。
JOCA
それらの代表的な成分名をいくつかあげてください。
グランデル
たとえば安息香酸とその塩、ソルビン酸とその塩などです。これらは食品にも使われており、もともと植物の成分に含まれていたものですが、現在は石油で合成されています。
JOCA
オーガニックコスメ認証基準で、石油から合成された防腐剤が「使用可」というのは、納得しない消費者もいるのではと思いますが。
グランデル
もしそれらの防腐剤を植物から抽出したものに限るとすると、それは量が少なく、価格も非常に高いものになります。ただしコスモス基準では、こうした合成の防腐剤を使った場合は、その割合を記載するように義務づけています。
JOCA
しかし持続可能という点からみても、やはり石油合成成分を使うというのは好ましくないのでは?
グランデル
もちろんコスモスもそう考えています。ですから将来、植物からより安全性がある防腐効果のある成分が出てくれば、それに移行していくことも考えられています。
JOCA
ぜひ早めにそうしていただきたいものです。そのほうが消費者にとってわかりやすい基準になると思います。
コスモスとは
2010年、ベルギーのブリュッセルで、ヨーロッパでは有名な、五つの認証団体が参加して、新たな認証団体コスモスを設立しました。コスモス設立の目的は、ナチュラル&オーガニックコスメの世界統一基準を作ることです。五つの認証団体とは、BDIH(独)、コスメビオ(仏)、エコサート(仏)、イチュア(伊)、英国土壌協会(英)です。
コスモスで許可している合成成分の例
コカミドプロピルベタイン | 合成界面活性剤 |
アルキルアンホアセテート/ジアセテート | 合成界面活性剤 |
アルキルグルコシドカルボン酸 | 合成界面活性剤 |
炭酸ジカプリリル | エモリエント剤 |
カルボキシメチルセルロース | 増粘剤 |
ラウリン酸ヘキシル | 合成界面活性剤 |
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド | 帯電防止剤、増粘剤 |
ジステアロイルエチルジモニウムクロリド | 帯電防止剤 |
安息香酸およびその塩類 | 防腐剤 |
サリチル酸およびその塩類 | 防腐剤 |
ソルビン酸およびその塩類 | 防腐剤 |
デヒドロ酢酸およびその塩類 | 殺菌剤 |
ベンジルアルコール | 殺菌剤 |
▲2007年以降、新認定製品に付けられるマークは上のようになります。
▲オーガニックEXPO 2014のセミナーにおけるBDIIH(ドイツ化粧品医薬品商工連盟)のローランド・グランデル博士のプレゼンテーション。原稿(英語)はこちらから
オーガニック生活便 VOL.13には、オーガニックの先進国オーストリアの取材記事やアイシスの独自基準で集められた多くのオーガニック商品が紹介されています。
BDIH(ドイツ化粧品医薬品商工連盟)
ドイツのビジネス都市、マンハイムに1951年に創設される。化粧品、医薬品、食品(特にサプリメントとダイエット食品)の製造と販売に関して、約500の企業や団体が加盟している。2001年2月には、世界で初めて自然化粧品の基準を定めた。
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日本オーガニックコスメ協会(JOCA)
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