「クレコ・ラボ」は、おもに「木の紙」の商品開発や販売を展開している会社。ビジネスで、衰退する日本の林業と森林を守るべく、国産木材を使った「木のストロープロジェクト」を立上げました。9月からクラウドファンディングが始まり、10月17日にはトークイベントも開催されます。
日本は、国土の3分の2が森林という国。林業の衰退によって、森林の4割にあたる人工林のバランスが崩れ、災害の要因にもなっています。(林業の現状と課題)昨年から話題になっていた「木のストロー」ですが、企業が参入することで、社会的な課題の解決につながっていきそうです。「クレコ・ラボ」代表の興津世禄(おきつ せいろく)さんにお話をうかがってみました。
木材を薄く削って紙をつくる技術がストローに応用されています
学生時代は、廃棄物研究を行っていたという興津さん。廃棄物エネルギーやカーボンオフセット事業の責任者などを経て、2008年に「株式会社クレコ・ラボ」を創業します。
「日本は資源がない国なので、ほとんど輸入してものづくりをしていますが、当時、唯一資源として使えそうだと思ったのが廃棄物でした。廃棄物を有効活用したかったのですが、廃棄物ではイノベーションが起きにくいと感じていました。ある時、日本には森林という資源があるじゃないかと気づいたんです」
森林資源の有効活用を思いついた興津さんが、自分でやるしかないと「クレコ・ラボ」は誕生しました。森林の活性化にもつながる仕事を、資本主義の原理で動く大きな会社ではなく、小さな会社でやることが面白いと感じたそう。
「日本は、木を伐ってはいけないというイメージがありますよね。でも人工林で木を伐らないということは、農業でいえば作物を植えっぱなしにするということ。木を植えて、間伐して、伐採した木をお金に換えて、その資金でまた木を植えるというサイクルがなくてはいけません。それが、林業の衰退によって崩れてしまっているのが現状です」
伐採が足りない暗い森
「人工的に植林された『人工林』は、一生人の手を加えていかなければいけないもの。それが林業の仕事です。会社としては、木の需要をつくっていく必要があります。そもそも、国産の木がコストや複合的な事情で売れないことがネックなんです」
森林を守ることは、水資源を守ることになる重要なこと。森が活性化するために、100年後に売れる木を植える必要性も感じているとか。さらに、天然林に戻していくようなグランドデザインを考えていくなど、未来の課題まで考慮する必要性も感じているそう。
「『林業をなんとかしなくてはいけない』で終わってしまってはいけない。その先には、林業がなくなってしまうという危機感もあります。現時点では木は伐った方が良いのですが、それも未来永劫の話ではありません。時代時代でニーズは変わります。その時の背景やマーケットを見ながら決めていかなくてはいけません」
適切に伐採・整備された森林
「企業として、木に触れる機会を増やすサービスを始めようと考えました。まず、木についてユーザーにもっと知ってほしいと、身近な木の紙をつくりました。木は、それぞれの色や香りに個性があるのでクローンのような紙とは違います。そこに多様性があり、人間っぽくて面白いんです」
東北の赤松、岐阜のヒノキ、島根の黒松、沖縄のリュウキュウマツなどが使われているそう。興津さんは、木目の色見や香りなど、見て触れて、木を五感で楽しんでほしいと言います。自然界だけの「1/fゆらぎ」がつくりだすという木のデザインは癒しにもつながりそう。
色見や木目が楽しい木のストロー。名前を入れることも可能です
販売価格: 1,800円(10本 ) ~
数/セット:10本、100本、500本、1000本
素材(樹種):国産杉 サイズ:口径約4mm 長さ約200mm
「新商品のウッドストローは、飲食店では使い捨てですが、個人で使う分には洗って繰り返し使えます。捨てると、またゴミになるのでは、と懸念される方もいらっしゃいますが、木の場合は捨てて良くて、燃やしても大丈夫なんですね。有害物質は出ませんし、木の成長過程でCO2を吸収するので、燃えてCO2が出てもニュートラルになります。さらに素材として、野菜と同じように、太陽光エネルギーとCO2で育つサステナブルなものです。じつは持続可能で使える素材は少ないんですよ」
太陽エネルギーがある限り、自然のサイクルにそって育てていけば、ほぼ永遠につくられる「サステナブルな木材」。これをビジネスで活かしていくことは、林業の衰退に歯止めをかけることにもなりそうです。
「身近にあるものに、もっと木があれば良いと思いますね。次は、DIY用の壁紙など提案していく予定です。今は、壁紙の上に貼ってもすぐ剥がせる糊もあるので、賃貸住宅でも使えるんです。子どもも大人も楽しめるような、四角や三角などのカタチで、壁に積み木をつくるような感覚で、レンガ風にもできたり、いろいろなアイデアを出していきたいですね」
そんな木の壁紙だったら、生活も楽しくなりそうです。また、温もりがあるものづくりは、日本ならではの技術でもあるとか。そして「これから、木を取り入れる生活が増えてくると思う」、という興津さんの言葉が心に残りました。
●クラウドファンディング:「全国の木材を使った木のストロー・木製ストロー開発」
期間:2019 年9 月24 日 ~ 11 月7 日(木)24 時まで 目標金額:100 万円
5,000 円:全国5 種類の樹種を使った、「木のストロー」セット(樹種5 種類ずつ、30 本セット)
5,000 円:3 種類の樹種(ヒノキ、杉、桜を予定)を使った、木の名刺60 枚セット(20枚×3種)
10,000 円:全国5 種類の樹種を使った、「木のストロー」セット(樹種5 種類16 本ずつ、80 本セット)
150,000 円:支援者さまが指定したエリア(都道府県単位)の木材を使った「木のストロー」
全力応援コース(お礼メールと応援資金を実行費用に充てさせていただきます)
3,000 円/10,000 円/30,000 円/50,000 円
●イベント情報:「木のプロジェクト」トークイベント開催
「水と森の問題について考える」きっかけをつくる、「木のプロジェクト」トークベイトを開催したします。
日時:2019 年10 月17 日(木) 19:00~21:00
会場:Supermama mit tobuhi(住所:東京都杉並区久我山2丁目14-9-103)
定員:10 名程度 申込は以下のメールアドレスまでお問い合わせください
E-mail: info@kinomeishi.com
●「木のプロジェクト」に関しての参考サイト
木のストロープロジェクトについて(漫画で解説)
水と森と木のストロー公式サイト
森のバーチャルツアー
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |