2.日本市場に存在する問題点 薬事法への対応
海外製品が多いオーガニック・自然化粧品市場に存在する問題点の一つに、日本の薬事法・法令順守への対応といったことがあげられる。オーガニック・自然化粧品はそもそも野菜ジュースのように通常腐る植物エキスを多用し、しかも防腐剤であるパラベンやフェノキシエタノールなどを配合しないというデリケートな製品が多いのが現状である。その中で、本製品の生産時には配合していないが、原料の植物エキス抽出時に配合している保存料が本製品となった時少しずつ集まりキャリーオーバーとして一定量製品から検出されるといった例も起きている。それらの一定量を超えたキャリーオーバー成分を成分表に表示していない場合は、薬事法違反として消費者保護の観点から市場、店頭・売場からの回収などのペナルティーを受けることとなる。
また、ホルムアルデヒドをはじめとして、アメリカやヨーロッパ、韓国他の国では一定量の使用が許されている成分で、日本では許されていない成分が存在する。ホルムアルデヒドなどは、多くの欧米製品は普通に含まれていることが多く、海外で流通している製品をそのまま日本に輸入販売すると使用禁止成分として検出、薬事法違反・製品回収といったケースもある。一部では、これが欧米化粧品の日本市場への参入障壁になっているという声もあるが、現状法規では日本の法律上での禁止成分を用いた製品の輸入販売は違法となってしまう。
その際の損失は限りなく大きい。化粧品会社は信頼関係にあった多くのファンと小売店からの信頼そして売上げを失う、該当ブランドを扱っていた小売店は欠品により棚に穴を開けて売上げを失い、お客様からのお店の信頼とストアロイヤリティを失墜させ、バイヤーは自社のコンプライアンスに傷をつけてしまう。
実際、海外のオーガニック・自然化粧品を輸入販売している日本の会社は比較的規模の小さな会社が多く、海外製品輸入時の生産ロットごとの成分検査分析などは非常にコストのかかることであり大きな負担になること、また日本市場向けが小さなロットの場合は世界流通製品と違うフォーミュラの日本市場専用製品を特別に生産してくれるという欧米企業は少ないことなど、海外製オーガニック・自然化粧品の輸入販売には多くのコストと潜在的なリスクの伴うものであるという現実もある。
現在は、オーガニック・自然化粧品であっても一般化粧品と同等の品質の高さを求められている。急成長しながら、体制の不備や薬事法違反などで店頭・売り場から回収となり今までのファンや小売店の信頼を失い、改善努力むなしくそのままブランドの終焉を迎えてしまうという悲しい現実も存在する。一方でしっかりとした体制で品質の高さと誠実な対応から顧客からのロイヤリティを着実に保っている優良なブランドも存在する。今後は、オーガニック・自然化粧品についても競争が激しくなっていく市場環境の中、ブランドの永遠の存続には万全の体制と着実な事業展開がますます必要になってくると考えられる。
また薬事法では化粧品の効果についての表現に規制を設けており、化粧品の効果として使用してよい言葉は限定されている。しかし、それらの定められた文言は新製品の新たな効果・効能を消費者に届けるには、月並みな使い古された表現である。そこで、各社は薬事法に則ったルールの中で、ギリギリの効果・効能表現に挑戦しているのが化粧品業界である。特に、オーガニック・自然化粧品ブランドは後発であり既存のシェアを切り崩していかなければならない。また、最近はオーガニック・自然化粧品にも機能性の高いものが求められ、効果効能、機能性、即効性を売りにしたブランドが多く出現してきている。そこで、取り扱い業者が大手化粧品メーカーというよりは新規参入の会社が多いことも理由の一つか、ラベルや広告の表現が法律のルールから逸脱しているものもたまに見受けられる。誇大表現や化粧品としての効果を逸脱した表現である。実際、成分を見れば同等の仕様でありながら、真面目に法令順守しているブランドは精彩を欠いている製品に見え、ルール違反の表現をしているブランドは革新的な製品に見え、薬事法に詳しくないメディアやバイヤー、消費者の目を惹き、その表現にて各媒体での目立ち度や店頭販売で成功しているという事実も存在していると考えられる。しかし、これらも薬事法違反で製品回収対象となれば、事業に対して大きな損失が発生するというリスクを孕んでいる。
今後は、オーガニック・自然化粧品市場自体が全体の化粧品市場の中で無視できない大きな規模になっていく中、こういった法令順守・コンプライアンスについて、各社およびバイヤー、メディアもしっかりと法律を守っていかなければ、知らなかったでは許されないであろう。売るための企業努力もルールに則って、事業運営上致命的なペナルティーを受けないような、また消費者を裏切らないような誠実な事業展開も必要になる。
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