収益だけでなく、環境や倫理的なこと、ボランティアなどを含め、企業として社会的な責任を持って活動を行うCSR。大企業ほど、その責任は重いものになります。
「SHIPS(シップス)」は、1975年にセレクトショップをオープンした老舗のファッションブランド。現在では、全国に80店舗を構えています。SHIPSのCSRプロジェクト「ONE SHIPS ACTION」は、ファッション業界から環境負荷を減らしていこうという、サーキュラーエコノミーまで視野に入れたもの。具体的な内容や思いを、営業企画部の木島康弘(きじま やすひろ)さんへうかがいました。
森林づくりにつながる「REDUCE BAG ACTION」
環境に配慮された紙袋
木材のFSC認証も取得されています
「REDUCE BAG ACTION」では、店頭でお客さまへ渡していたラミネート加工や不織布素材のショッピングバッグを、環境配慮型紙袋へ使用変更されています。また、9月1日からショッピングバッグの使用を辞退することで、1回につき10円が「公益社団法人 国土緑化推進機構」が運営する「緑の募金」に寄付されるシステム。
この取り組みによって、「SHIPS」に来店するお客さまの意識や気持ちの変化はあったのでしょうか。
「我々の取り組み以前に7月1日よりスーパーなどでレジ袋が有料化されたこともあり、マインドとしてお客さまの意識は変わってきていると思われます。しかし、9/1にスタートしたばかりで、反応としてはまだなにも見えていません。このような取り組みをお客さまに認識していただくには、長い時間をかけ継続していくことが大切だと考えています」
今後さらに、環境へのアプローチは続いていくようです。
日本環境設計株式会社に賛同して生まれた「RECYCLE ACTION」
服から服をつくるという循環は、ファッションブランドが取り組みたいもののひとつ。8月には期間限定で、SHIPSの5店舗で衣料品の回収が行われました。衣料回収は、今後も継続的に行われていく予定だそう。
「日本環境設計株式会社」は、古着を回収し、リサイクルした再生素材を使った服の販売まで行う「BRING™」を展開しています。「BRING™」のマテリアルラインである「BRING Material™」を使用したSHIPSのオリジナル商品が誕生しました。
「日本環境設計株式会社」との出会いについてお尋ねしてみました。
「素材のリサイクル・衣料品の回収をおこなえる事業者を探していました。数年前のことですが、古着を集めて燃料にして車を走らせる事業を行っていたのが『日本環境設計株式会社』でした。洋服との親和性を感じ、お話ししてきた結果です」
こうして、「Organic、Nature、Ethical」の頭文字にひとつの思いが込められたオーガニックコットン「One Cotton」と、「BRING Material™」の再生ポリエステル糸を掛け合わせることで、天然繊維の風合いを保ちながら、速乾性を併せ持つ、SHIPS完全別注のオリジナル素材のTシャツが完成。
MENアイテム ポケットTシャツ:4,500円(税別)
WOMENアイテム シンプルなデザイン Tシャツ:4,500円(税別)
WOMENアイテム 着丈の長いスリットが入ったTシャツ :6,300円(税別)
「デザインは、飽きのこない定番Tシャツをメンズとペア着用できる様にしました 。WOMENアイテムでは、背中内側に入れたロゴプリントの文字もTシャツの色に合わせた女性らしいカラーにしています。もう一アイテムは丈が長くゆったりしていますが、スリットを深く入れ、よりすっきりとした印象になるチュニックタイプです。袖を折ってラフに着用するのもおすすめ。素材は、インドで無農薬栽培した、トレーサビリティも取れるオーガニック綿を使用しています。 また、生地を安定させるために『BRING Material™』の再生ポリエステルをプレーティングしています」
どれもシックな色合いで、1枚あればコーディネートの幅が広がりそうです。
最後に、「ONE SHIPS ACTION」への思いをお聞きしました。
「昨今、ファッションと環境問題について大きく取り上げられるようになりました。ファッションが環境に与える影響は、気候に関わる温室効果ガスの排出量、水や化学物質の使用量、マイクロプラスチック問題に、シーズンレスアイテム廃棄に伴うゴミ問題など、多種多様です。『ONE SHIPS ACTION』は、今そして今後もできることを『SHIPS』として、また『SHIPSスタッフ有志』として活動を行なっていくことを目的としています。さまざまなアクションの中で、持続可能な未来を築いていくための取り組みや活動を継続していきます」
年々気象災害が激化して、自然環境や暮らしに影響を及ぼしています。それぞれの企業ができること、同時に私たちができることを少しでも継続してやっていく、その必要性を強く感じました。
《関連キーワード》
CSR, サーキュラーエコノミー, リサイクル, リデュース
執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |