近江商人の哲学のひとつ「三方よし」。商売は、「売り手よし」と「買い手よし」だけでなく、世間(社会)にとってもよい「世間よし」でなければならないというもの。サステナブルな経営のために、社会にとって良いかどうかを意識したビジネスが求められています。
関西を中心にコミュニティ型ホテルを展開する「株式会社ホロニック」では、「三方よし」に加えて、「作り手よし」・「地球よし」・「未来よし」の“六方よし”をクリアしていくべきという方針を打ち出しています。
「株式会社ホロニック」の代表取締役 長田一郎 (ながた いちろう)さんには、将来世代を生きる若者と共に六方よしの未来社会を創っていきたいという想いがありました。そこで、2022年には、最高責任者として20歳以下のCFO(Chief Futureship Organizer:未来創造最高責任者」(以下、CFO」)を新設。当時19歳と20歳の初代CFO3名が誕生しました。「株式会社ホロニック」の経営ボードへ、直接具申や提言をおこない、経営やホテルの運営に取り入れられています。
初代CFOの3人がおこなった提言は「地球環境のためにホテルの食事の選択肢に代替え肉を加える」、「業務効率化のため対人接客以外をデジタル化」、「ゴミゼロ」、女性に配慮した「F休暇」など。この提言に基づき、大豆の代替え肉を使ったキーマカレーの商品開発、客室のゴミ箱を資源箱に変更しゴミを資源に変える意識をお客様にも持っていただくなどの取り組みを実施することができたそう。
2代目CFOの田中さん
同志社大学 文化情報学部に通う19歳。TV東京 電通高校生プレゼン全国大会で優勝するなど、他にもバトントワリング、
声楽、弁論、書道で優秀な成績を修める。現在は、「廃棄苗」の農業問題を解決するため、
活用法を考案し、様々なメディアにも出演、農林水産省からも賞を受賞
2023年7月24日、2代目CFOに19歳の田中愛乃(たなか あいの)さんが就任。1人体制となって選ばれた田中さんの秀逸なところは、すでにライフワークとなっている「廃棄苗活用」の活動です。
プレゼンの様子
田中さんは、2021年に実家が苗農家を営む友人と廃棄される苗を有効活用する「もったい苗」というプロジェクトを立ち上げています。立派な野菜が育つ廃棄苗。その廃棄苗を教材にした食育授業、農家から買い取った廃棄苗をキットにして販売、売上の一部を農家さんへ還元するなどの取り組みを行ってきました。注目されている食品ロスですが、規格外の苗も廃棄されている現状を知っている人は少ないのでは。
株式会社ホロニックが運営するセトレグループ
「株式会社ホロニック」が運営する地域住民・地域社会のためのコミュニティホテル「SETRE(セトレ)」。
「つながり、つなぐ」をコンセプトに、時代の文化の中で見失われてきた数々の宝物、
地域に眠る「物語」を新たな「価値」に変えてお客様に届け、
人と人、人と地域の絆を結んでいきたい、そんな「コミュニティホテル」を目指しています。
田中さんは「『SDGs』や 『環境問題』などのキーワードだけではなく、楽しさやワクワク感を持って関与できるプロジェクトが持続可能な未来を築く鍵だと考えます。一度の興味を呼び起こすだけでなく、人々が本当に楽しみながら自然と社会に貢献できる仕組みを作っていきたい」と言います。
今回のCFOには「株式会社ホロニック」の社会活動を行うNPO法人の立ち上げに関わることも目的のひとつにされていたそう。未来は予測困難なものですが、アイデアと実行力のあるZ世代の登場に胸がふくらみます。
株式会社ホロニック https://www.hol-onic.co.jp/
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |