【 五十嵐和恵の季節を楽しむくらし Vol.31 】 七夕の節句

♪ささの葉さらさら/のきばにゆれる/お星さまきらきら/きんぎん砂子♪ 童謡「たなばたさま」を口ずさむと頭にうかぶのは、小さいころ願いごとを書いた短冊をワクワクしながら笹につけたこと。素敵な夏の思い出です。五節句についてお届けしている今年のコラム、今回は七夕の節句についてお伝えいたします。

七夕(しちせき)の節句

他の節句同様、中国から伝わった七夕の節句。天の川の両岸にある牽牛(けんぎゅう)星と織女(しょくじょ)星が一年に一度だけ77日の夜にだけ会えるという「星伝説」。そして、機織(はたおり)をする織女にちなみ、裁縫や書道・音楽など技術の上達を願い、五色の短冊に歌や字を書いて竹に飾り付ける「乞巧奠(きっこうでん)」。奈良時代、この2つが日本に伝わりました。

日本では旧暦77日はお盆前のタイミング。もともと日本には、水辺で穢れを祓う風習や、女性が織った布を先祖の霊に捧げて無病息災を願う「棚機女(たなばたつめ)」と呼ばれる行事がありました。中国と日本のさまざまなものが結びつき、「しちせき」と呼ばれていた「七夕」が「たなばた」と呼ばれるようになったと言われています。

笹飾りと短冊

「七夕の節句」は別名「笹の節句」。笹竹に願い事を書いた短冊などの笹飾りをします。笹竹は成長するスピードが速いので縁起が良い植物。笹の葉のすれ合う音は神様を招くと考えられ、天の神様に届くよう空に向かって立てるようになりました。江戸時代寺子屋が普及し、習字や計算など習い事の上達を願う気持ちが中国の乞巧奠と重なって広まったようです。

童謡「たなばたさま」の二番は「五しきのたんざく/わたしが書いた/お星さまきらきら /空からみてる」と続きます。短冊は中国の陰陽五行説からきた「青・赤・黄・白・黒」の五色。日本では黒は縁起が悪いと思われているため、高貴な色である紫に変化しました。

七夕の行事食

古代中国で77日にある子どもが熱病で亡くなった後、熱病が流行ったそう。その子が好きだった索餅(さくべい)をお供えしたところ熱病は収まった、という伝説が。中国で「索」は太い縄を、「餅」は小麦粉と米粉を合わせたものを意味し、索餅は小麦粉と米粉を練り合わせ縄状に伸ばして作ったお菓子。長崎では「よりより」として親しまれている中国のお菓子「麻花兒(マファール)」です。

この索餅が日本に伝わったのは奈良時代。七夕の儀式に供え物の一つとして使われたそう。その後、索餅が元となりできた麺を手延べする方法が日本に伝わり索麺(さくめん)が誕生。索麺(そうめん)、そして素麺(そうめん)へと呼び方が変化。平安期から宮中における七夕行事には無病息災を願い、織り糸や天の川を連想させるそうめんを食べるようになったと。

昔の七夕はお盆前の行事。今でもお盆のお料理で精進料理と一緒にいただくことが多いそうめん。当たり前のそうめんもこのようなストーリーがあると思うと味わい深く感じます。

全国乾麺協同組合連合会は、昭和57年に77日を「七夕・そうめんの日」と制定。芸事に限らず恋愛・健康の願い事が叶うよう77日にそうめんを食べることを普及しているそうです。

そうめんの他、七夕に食べられるのは、ちらし寿司や笹寿司、笹かまぼこなど。ちらし寿司は長寿を願う海老や財宝の意味もある錦糸卵などの具材をのせる縁起の良い食べ物。笹は邪気を払う植物と考えられているので、お祭りや祝い事のお料理に使われます。

笹寿司は北信越地方に伝わる郷土料理。酢飯を笹で包んで押してつくるものや、クマ笹の上に酢飯をのせて具材を盛り付けたものがあります。七夕は夏の収穫をお祝いする日でもあるので、キュウリ、ナス、トマト、スイカなど旬の野菜や果物を使うのもいいですね。私はオーガニックや無農薬の野菜としいたけを使ってつくります。お気に入りの具材は、オーガニックサラダカボチャの浅漬け。生食できる小型のカボチャ。パリパリの食感がクセになります。笹の葉には殺菌・抗菌作用があるので、暑い季節にも安心です。

77日は梅雨末期で豪雨のことも多いですが、今年は例年より早い梅雨明けが予想されています。美しい星空を楽しめることを願うばかりです。皆さまはなにを願いますか?

ポジティブ・エイジング アドバイザー、健康管理士一般指導員、食育インストラクター。福岡市出身。時間とともになんとなく年をとるのではなく、加齢に対して前向きに準備をしながら素敵な年齢を積み重ねてゆく=「ポジティブ・エイジング」を提唱。東洋医学のある暮らしでうつ病や難病も克服。お子さんからシニアまで幅広い世代の方に、セミナーや講演会を開催。福岡県立高等学校食育出前講座、西南学院大学市民講座などの講師を務める。

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