「遊べて」「学べて」「考える」という基本コンセプト。創業120年の木の玩具メーカー「独楽工房 隈本木工所」

福岡県八女(やめ)市にある「独楽工房 隈本木工所(こまこうぼう くまもともっこうしょ)」は、伝統工芸品の提灯や仏壇の部品加工を行っていた会社。木の加工技術を生かし、1899年の冬から「こま」の製造販売が始まりました。2002年には、「こま」に加えて「けん玉」や九州産の木材を使った「つみ木」など、本格的に木のおもちゃづくりがスタートしました。

1899年に創業した隈本木工所

江戸時代に子どもたちに人気があり、盛んにつくられていた鉄芯を使った「和ごま」。現在「和ごま」をつくっているのは、福岡県では隈本木工所だけです。隈本木工所では、伝統技術を生かしながらも、安全性や知育性が優れている玩具に与えられる「グッド・トイ」や「福岡デザインアワード大賞」を受賞するなど、洗練された木のおもちゃがつくられています。

 

江戸時代に全国で人気となったという博多こまに、八女こま、肥後こまを木芯にリメイクしたもの
見て楽しめる飾り台と持ち歩ける巾着付き 「福岡・熊本のこま比べセット」:2,700円(税込)

 

轆轤(ろくろ)を使って削るという伝統的な手削りが、長い歴史の中で受け継がれてきました。3Dなど機械化も取り入れていますが、生きている木はひとつひとつ違っています。最後には必ず職人さんが丸みや質感など確かめながら研磨しているそう。こうして、温かみのあるおもちゃが完成していきます。

大人にも人気のクラフトけん玉:1,620円(税込)

塗料には、「リボス」と「オスモカラー」という世界的に安全性が高いと評価されているドイツの自然塗料メーカーが採用されています。リボス社の塗料は、有機・無農薬栽培の植物原料が使われ、化学物質を一切含んでいません。オスモカラーも自然の植物油でつくられています。赤ちゃんや子どもが口に入れても安全なものです。

 

絶妙な丸みが優しくて可愛い。2019年のグッド・トイを受賞
コロガルアニマルシリーズの「コロガルアニマルつみき」:10,584円(税込)

自分たちの目が届く範囲で生産されたものを仕入れたいという理由で、木材はクスノキ、ミズキ、ブナ、サワグルミ、ケヤキ、ヒノキ、イタヤカエデなど、木工所がある九州で育ったもののみが使われています。すべて、信頼できる八女の製材所から、どこの地域で切り出されているのかがわかる「出荷証明書」が取れるもののみ。

 

直径8mmのこまがガラス瓶に入っています。ちびこま(3個入り):1,080円(税込)
削りから色塗りまでひとつひとつ手作業

「こま」に使われる材料のマテガシ(マテバシイ)の原木は、年々減少傾向にあります。6代目当主の隈本知伸(くまもと とものぶ)さんは、「マテガシが入らなくなり、沢山の方の協力のもと、山に生えている木を見つけて土地の持ち主の方を探し、トラックで取りに行くような状況です」と、語っています。

 

森林を健全な状態に保ち、木が好きな子どもを増やことが目的の木育活動

そこで、隈本木工所では、九州の森林を健全な状態に保つため、地域と連携した木育活動が行われています。スギやヒノキの新商品づくりにも挑戦し、「こまの絵付けとこま回し体験」や「親子で楽しむ木工体験」など、ワークショップが開催されています。

日本の子どもたちは、木や紙のおもちゃで遊んできた長い歴史があります。隈本さんは、「他人とのコミュニケーションが取れない人が増え、引きこもりなどが社会問題化している今こそ、こまのような昔の遊びが必要ではないか」と感じているそう。

大人にも人気のクラフトけん玉:1,620円(税込)

創意工夫をしながら、夢中になって遊ぶ子どもたち。そして、一緒に遊ぶことで、親子のコミュニケーションも可能に。いくつになっても遊びは心を豊かにしてくれるようです。

 

「独楽工房 隈本木工所」公式サイト

企業情報

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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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