SDGsの認知度の高まりとともに、ソーシャルビジネスが広がっています。2008年時点で約8000社だったソーシャルビジネスに取り組む日本の企業数は、約20万5千社まで増加しているそう(参考:ボーダレス・ジャパン)。
さまざまな社会課題をビジネスで解決しようという「ソーシャルビジネス」。
「Sunday Morning Factory株式会社」(以下、Sunday Morning Factory)は、世界最貧国と言われていたバングラデシュの貧困や児童労働など厳しい環境にある子ども達の現状を変えることを目的に、2017年に立ち上げられました。
バングラデシュに工場を建て、オーガニックコットンでつくられるベビー服ブランド「Haruulala organic(ハルウララ オーガニック)」を展開しています。
子ども達へ「環境負荷を最小限に抑えるだけでなく、できれば今よりももっと良い地球を残したい」という熱い思いが原動力。そんな「Sunday Morning Factory」の代表取締役社長「中村将人(なかむら まさと)」さんにお話をうかがいました。
効率的に働ける人を採用しない工場
Sunday Morning Factory株式会社 代表取締役社長 中村将人
1986年茨城県生まれ。ボーダレス・ジャパン新卒第一期生として入社。
Borderless House、AMOMA 配属後、
バングラデシュの貧困地域における児童労働問題を撲滅するため、
ボーダレス・ジャパンの起業支援制度を使い起業。
オーガニックコットンのベビー服ブランド“Haruulala”を展開し、
その商品を生産する自社工場を現地に設立。安定した雇用を生むことで、
子どもたちが家計を支えるために働かず、学校へいける環境を整える。
現在120名を超える雇用を創出。
中村さんは意外にも、初めはソーシャルビジネスをやるという意識はなかったそう。
「それほど志は高くなかったんです。ただベンチャーを起業したくて、当時シェアハウスを運営していたボーダレス・ジャパンに入社しました。
入社2年目に「AMOMA natural care」のミャンマーの貧困農家さんのための仕事を創っていく事業に配属されました。その後バングラデシュに行く機会があり、現地で雇用創出をするために、バングラデシュに縫製工場を建てました」
プリント名は「森のおはなし」
2WAYオール(長袖):4,950円(税込)
時に従い、バングラデシュの様子は変化していきます。
「初めは何もないところへ工場を建て、現地の人たちを雇用していました。7年、10年と経って、町の景色が変わり、まわりに工場がたくさんできた。国もだんだん発展して、仕事がないところに仕事を創るという状態ではなくなっていました。
じゃあ僕たちがやることに、どんな意味があるのだろうと…。 そこで、仕事があっても働ける人と働けない人がいる。そんな状況を変えていこうと考えたんです」
バングラデシュの工場スタッフ
「バングラデシュでつくられるのは、おもにファストファッションなどの安価なもの。日本で売られているバングラデシュ産のものは非常に安いですよね。そういったものをつくるとなると、若い人、頭が良い人など効率的に働ける人が選ばれていきます。
長く働けないお母さん達。学校に満足に行けなかったため、文字も計算もできない人達。ハンディキャップがある人達。そんな人達は、なかなか仕事に就けない。僕たちは、他の工場で採用されない人達を積極的に採用しています」
縫製の様子
フェアトレードとはちょっと違うアプローチで、商品のデザインと企画・販売を日本で行っています。
「そうですね。会社として児童労働をなくすことを目的に、とにかくお父さんお母さん達が生活に困らないよう、安定した給与を払うために社員になっていただいています」
トラぺーズラインチュニックセット:6,600円(税込)
バングラディシで児童労働は少しずつ改善されているものの、日に日に悪化しているのは環境問題でした。
そこで「Haruulala organic」工場の電力には自然エネルギーを採用し、CO2を回収するためマングローブの植林活動「ウララ海の森プロジェクト」を行ない、段ボールはFSC認証のものを使用。着なくなった服の回収まで行われています。
「大切にしているのは、創業当初から変わらないオーガニックコットンを使うというコンセプト。子ども達にも環境にも生産者さんにも良いもの。環境問題を考えた時、コットンであればルールとしてオーガニックというところです」
原料のコットンは、インドの「organic content standard 」認証を取得したオーガニックコットンを使用しています。
半袖セットアップ:各5,500円(税込)
可愛くて品の良い色合いのアイテム。染色もエコテックス認証を取得しています。
「出産祝いのオーガニックコットンの製品は、日本では生成り色のものが多かったんです。カラフルなものを提案しているのも『Haruulala organic』のユニークなところ。そしてデザインで意識しているのは、元気さよりも優しいイメージを表現すること。
お客様から、大人が小物で持ちたいデザインだと言われました。女の子は、例えばピンクを使う時に、少し大人びたピンクを使っていて。いわゆる子どもらしい可愛いとは違うデザインにしています」
名前を書いてカットして使う「おさがりお名前タグ」
2019年度グッドデザイン賞を受賞したのが「おさがりお名前タグ」。子ども服には、名前を記入したいというニーズから生まれたアイデアです。大手会社からもアイデアを使っていいかどうかと連絡があったそう。中村さんは快諾し、もっともっと広がってほしいと言います。
最後に、今後の展開をお尋ねしてみました。
「ベビー服だけでなく、長く使っていただくために、キッズの服やサイズ展開を増やしています。
そして、バングラデシュでは120人くらい雇用できているのですが、まだ完全な児童労働の解決には至っていません。規模を大きくしながら、長く愛されるブランドを増やしていきたいと思います」
子ども服に限らず、性別や年齢層に合わせ、いろいろなアイテムも登場するようです。そして新ブランドは、それぞれブランド名を変えていく予定だそう。
「じつは『Sunday Morning Factory』という会社の名前を『Haruulala株式会社』にしなかったのは、そこに理由があります。
自分にとって日曜日の朝は、元気はつらつなんです(笑)。朝から洗濯物をハミングしながら干したり。『Sunday Morning Factoryは、日曜の朝の工場』。そういう元気で楽しい雰囲気の工場を建て、いろいろなブランド名をつける。『貧困問題、児童労働問題を解決のため』と言うと難しい印象ですが、ポジティブに感じるブランド名を考えていきたいんです!」
キュートなギフトボックスのセットも揃っています
「いつも会社で言っているのは、 ワンビレッジ、ワンファクトリー、ワンブランド!
例えば、ただ工場を大きくしても、工場を1個つくったら周辺の人しか通勤できないですよね。だったら他の村にも工場を建てていく。1つの村に必要な雇用を生みだせるブランドと工場を創ること。これを目標にしています」
「Sunday Morning Factory」には、自然環境や他者に対する思いやりと気づかいがベースにありました。そこに、普遍的なものを感じます。
Haruulala organic https://haruulala.life/
企業情報(Sunday Morning Factory株式会社)
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |