【 五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方 Vol.22 】 2023.5.6~2023.8.7 夏の養生

風薫る5月。新緑がさわやかな初夏がやってきました。季節とともに着る洋服が変わるように、体が求める味も変わります。暑いときはさっぱりした味がおいしく、寒いときはこってりした味がうれしい。体は自然と必要な味を教えてくれます。

2023年のコラムテーマは「味わう」。今回はこれから迎える本格的な夏に向け「酸味」について考えたいと思います。

夏は酸味

夏は酸味を味わいたい季節です。

日本で初めて「食育」を提唱した明治時代の医師で薬剤師でもある石塚左玄。彼の著書「食物養生法」には「春苦味、夏は酢の物、秋辛味、冬は脂肪と合点して食え」と書いてあります。現代のように科学的に証明される前から、先人は気づいていたのです。

また、東洋医学でも夏におすすめの味は酸味。酸味はもれ出るものを抑える収れん作用があるので、汗のかきすぎを抑えてくれます。東洋医学の考え方による酸味がある食材は、酢、梅干し、柑橘類、トマト、桃、パイナップル、ブルーベリー、キウイフルーツ、アンズ、ローズヒップ、マスタードなど。直接的な酸味だけではなく、複数の味が混じりあったものも含まれます。

酸味の効能

すっぱいものを見て唾液がでた経験はありませんか?酸味は食欲を刺激。唾液や胃液の分泌を高め、消化を促進します。減塩したいとき、少し酸味を使うのもおすすめです。

レモンや梅干しのすっぱさのもとはクエン酸。クエン酸は、体内のエネルギー代謝をスムーズにし、疲労回復やスタミナ増進の働きが。カルシウムや亜鉛、鉄などミネラルの吸収を高める働きもあります。魚の南蛮漬け、イワシの梅煮、牡蠣にレモンなどは、理にかなっているのです。また、クエン酸には細菌増殖を抑える働きも。夏や梅雨に起こりがちな食中毒の予防に利用できます。

酸味の常備菜

猛暑日が続くころになると、長時間火を使ってお料理するのもおっくうに。私は簡単にできる酸味の常備菜を作りおきしています。

常備菜に私がよく利用するのが、梅干しと梅干しを作るとき塩に漬けた梅の中から出てきた梅酢。梅酢は白梅酢と紫蘇を一緒に漬けこんだときに出る赤梅酢があり、お料理によって使い分けています。古来より「一日一粒の梅干しで医者いらず」と言われるくらいたくさんの健康効果がある梅干し。熱中症対策の塩分補給にもピッタリです。

 また、柑橘類をサラダやマリネなどお料理に使うのも好き。香りは緊張した神経をしずめ、ストレスの緩和に役立ちます。暑さでイライラするときは、柑橘類の香りでリフレッシュ。暑くて長い時間調理したくない夏は、どの季節よりメニューを工夫している気がします。

 今回ご紹介するのは混ぜるだけと簡単な工程の5品。作って少しおいたほうが味がなじみます。シンプルなお料理ほど際立つ素材のおいしさ。ぜひオーガニックのものでお試しください。

 

①みょうがとしょうがのすし酢漬け…切ったみょうがとしょうがをすし酢に漬ける。

②パプリカマリネ…薄切りしたパプリカをりんご酢、オリーブオイル、粒マスタード、はちみつ、塩で作ったマリネ液に漬ける。

③甘夏入りキャロットラペ…千切りした人参に塩をし、むいた甘夏を混ぜてオリーブオイルをかける。

④はちみつトマト…湯むきしたトマトを温かいうちにはちみつに漬ける。(はちみつの代わりに本みりんでもおいしい。)

⑤梅おかかゴーヤ…塩もみして余計な水分をしぼった薄切りのゴーヤを梅酢で和え、かつおぶしをかける。(ゴーヤの苦味が強すぎると感じる方は、さっとゆでてください。)

 

夏、食欲がおち食べる量が減ったり、そうめんなど簡単なものですませたりしていると、栄養不足になり疲れがとれないどころか、夏バテにもつながります。酸味を上手にとり入れたものを味わいながら、暑い夏を健やかに過ごしましょう。

 

※酸味は、胃酸が多く出て胃炎や胃潰瘍などの症状がある方や胃酸が逆流する逆流性食道炎の方は摂りすぎると悪化する可能性があります。体の声により添いながら、摂る量を調整してください。

※夏の養生については「 五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方Vol.261217 」を併せてお読みください。

ポジティブ・エイジング アドバイザー、健康管理士一般指導員、食育インストラクター。福岡市出身。時間とともになんとなく年をとるのではなく、加齢に対して前向きに準備をしながら素敵な年齢を積み重ねてゆく=「ポジティブ・エイジング」を提唱。東洋医学のある暮らしでうつ病や難病も克服。お子さんからシニアまで幅広い世代の方に、セミナーや講演会を開催。福岡県立高等学校食育出前講座、西南学院大学市民講座などの講師を務める。
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