食品だけでなく衣服ロスも環境影響の大きさが指摘されています。
環境省の衣服マテリアルフロー※1によると、衣類の国内新規供給量は計81,9万トン(2020年)に対し、その9割に相当する計78.7万トンが事業所及び家庭から手放されていると推計。このうち廃棄される量は計51.0万トン(64.8%)、リサイクルされる量は12.3万トン(15.6%)、リユースは15.4万トン(19.6%)と報告されています。
※1製品が市場に投入・供給されてから適正に処理をされるまでの工程
6割以上が廃棄処分される衣類。衣類の製造工程と廃棄工程では、多くの二酸化炭素を排出します。
「株式会社BIOTECHWORKS-H2(バイオテックワークス エイチツー)」は、構想に3年をかけ“廃棄物ZEROプロジェクト「ごみから水素へ」”をテーマとした「BIOTECHWORKS-H2®」をスタートさせました。
代表取締役CEO 西川明秀(にしかわ あきひで)氏
SDGsという言葉がまだ無い
2012年よりサステナブル素材の開発に取り掛かり
「未来のために。将来の地球の為に」を合言葉に、
ファッション業界のカーボンニュートラルの実現、
ネットゼロ社会の構築を目指す。
昨年11月に、EUが曖昧な「環境に優しい」という表現を禁止する規制案を採決するというニュースが配信されています。世界の記録的な気候変動には、確かな実効性が必要です。
「株式会社BIOTECHWORKS-H2(バイオテックワークス エイチツー)」は、サステナブル素材「ZERO-TEX®」の開発に成功した「有限会社やまぎん」の子会社として2023年7月5日に設立。
プロジェクトは、 アパレル業界が直面する「廃棄アパレルの削減」「グレーゾーンだらけのサステナブルからの脱却」にとどまらず、「すべての有機廃棄物を再生可能エネルギーへ変換させ、サステナブルの先にあるリジェネレーション(再生)社会の構築」を目指していくというもの。
この「すべての廃棄物を廃棄しない」というプロジェクト。名前の由来は、BIO =生命及び生物を中心とした有機物、TECH =テクノロジー、WORKS =集団、H2 =水素だそう。
有機物を再生可能エネルギーである水素に変換し、有機物本来の姿とも言える「サーキュラーエコノミー」を無理なく永続的に行う計画。現在の焼却処分などが中心の廃棄物処理の方法では、二酸化炭素削減は難しいと考えられているからです。
ケミカルリサイクルされる。BIOTECHWORKS-H2 Inc. 提携プラント
「BIOTECHWORKS-H2」では、廃棄物をクリーンな水素エネルギーに変えるケミカルリサイクルシステムを採用。ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックなどを分子レベルまで分解し再利用する先端技術。プラントでは、アパレル分野だけでなく有機性廃棄物全般も水素エネルギーに変えることができます。
このシステムを媒介にして企業や人を結び付け、地球環境や企業が抱える課題の解決を目指し、グレーゾーンの無いサーキュラーエコノミーの構築を叶えるプロジェクトです。
具体的には、「アメリカ法人BIOTECHWORKS-H2 Inc.」がアメリカにあるプラント会社と契約。そのプラントをベースとして使用し、廃棄物を燃焼させずにガス化という手法で、有機廃棄物の99%以上を再生可能エネルギー化することを可能にしました。
プラントで発生した混合ガスは水素(H2)と二酸化炭素(CO2)に分けられます。水素は燃料電池や水素コージェネレーションで再生可能エネルギーとして発電することを推奨しています。二酸化炭素は、必要な企業へクリーンな二酸化炭素として提供したり、炭酸飲料用に使用する予定だそう。
ケミカルリサイクルに必要なバッチ試験も終わらせて、繊維製品からは廃棄物量の6〜7%、食料残渣からは7〜8%を水素化できることも確認しているそう。さらに、鉄などエネルギー化ができない廃棄物(スラグ)も捨てずに、鉄は鉄くずとして、その他はアスファルトや建築資材などに有効活用。
2025年からは、日本とマレーシアでプラント建設を目指し、2030年までに「すべてのごみが資源になり、廃棄物がゼロになる」時代を構築するのが目標。
水素の用途は多岐にわたっています。
「株式会社BIOTECHWORKS-H2」代表取締役CEOの西川さんは、「ビジネスの手段として環境対策に向き合い、解決に向けて実行していきます。『決断し実行する』。本気になれば未来を変えることが可能なんです!」。明るい未来を創り出すため、筋のとおった強い信念がうかがえました。
消費者庁によれば、食品ロスの半分は家庭からのもの。ライフスタイルの見直しと共に、廃棄物を廃棄物にしない技術が、私たちの身近なものになっていくのではないかと感じます。
BIOTECHWORKS-H2 https://biotechworks.us/jp/
《関連キーワード》
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |