【 五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方 Vol.21 】 2023.2.4~2023.5.5 春の養生

まだまだ寒さ厳しい毎日ですが、華やかなチューリップは春の訪れを感じさせてくれます。5年目のコラム。テーマは「味わう」です。

日々「味わう」ことを大切にしている私。食事は、食欲を満たすために食べるのではなく、五感を働かせながら味わい、時間は、時に流されるのではなく、その瞬間の時を味わう。そんな意識で暮らすようになってからは、心と体がゆるやかに整っていくのを感じます。新しい一年、「味わう」ことを一緒に考えてみましょう。


おいしさ

私たちはおいしいものが大好き!では「おいしさ」っていったい何?味のこと?

味覚とは、舌にある味蕾の味細胞に味物質が触れて起こる感覚。甘味・塩味・酸味・苦味・うまみの五原味があります。その味覚に視覚(料理の見た目)、聴覚(噛んだ時の音)、触覚(食感)、嗅覚(香り)、そして食事をする雰囲気や、温度、音、色彩や心理的要因など、すべてが相互に絡み合って私たちは「おいしさ」を感じます。

人生は食べることのくり返し。なんとなく「食べる」のではなく、五原味 を「味わう」ことを意識すると、食事の満足感は大きく、心豊かになります。

下から、しめじ、キャベツ、じゃがいも、玉ねぎ、人参

重ね煮

重ね煮は食養料理家の故・小川法慶氏によって考案された調理法。食材を下から順に層になるように重ね、少々の自然塩と無水もしくは少量の水で煮るだけ。食材が持つ陰と陽の力を利用し食材が持っている本来のうまみと甘味を最大限引き出すので、簡単ですが驚くほどおいしくなります。正に、素材のもつおいしさを「味わう」のにピッタリな料理です。

重ね煮で大切なのが重ねる順番。きのこ類など上に向かって伸びようとする陰性のものを下に、根を生やし下に向かって伸びようとする陽性のものを上に重ねます。これに火を加えることで、上に向かおうとする力と下に向かおうとする力が働き、鍋の中で対流がおきて野菜が調和し、野菜がぐっとおいしくなります。

具体的には、下から順番にきのこ類、海藻類、果菜類、葉物類、芋類、根菜類、穀物、肉・魚介類。重ね煮では、野菜の皮や根のアクもうまみに。アクが強い自然栽培や化学肥料、農薬を使っていないものなら、なおおいしくなりそうです。 

重ね煮はおいしいだけでなく、保存が効きます。多めに作り、いろいろなお料理にアレンジできるので便利。やわらかくつぶすと離乳食や幼児食、介護食にもおすすめです。

重ね煮を自家製マヨネーズと合わせたポテトサラダ
トマトペーストで味付けしたラタトゥイユ
具材にした味噌汁

新鮮な野菜の少ない冬。春になると野菜や山菜が次々に登場。旬のものをいただくことは、最高の養生です。これから出てくる春キャベツ、新じゃがいも、新玉ねぎにはどれも甘味が。自然な甘味のある食材は、春に弱まりがちな消化吸収の働きを助けてくれます。今回はアレンジしやすい材料を使った重ね煮をご紹介します。素材のもつやさしいおいしさをぜひ味わってください。

【材料】(鍋に合わせた量)
しめじ、キャベツ、じゃがいも、玉ねぎ、人参、自然塩

【作り方】

  • 鍋の底に一つまみの自然塩をふり入れる。「おいしくな~れ」の気持ちを込めて。
  • しめじは石づきを取る。キャベツはざく切り、玉ねぎは回し切り、じゃがいもと人参はイチョウ切りに。
  • しめじキャベツじゃがいも玉ねぎ人参の順番に、平らな層になるように鍋の底からふんわり重ねていれる。
  • 最後に上から一つまみの自然塩を全体にふりかける。
  • ふたをして弱火で約30分煮込む。少し蓋をあけ人参が柔らかくなっているかを確認。柔らかくなっていたら出来上がり。

※鍋は厚手で、ふたに穴のあいていないものを使うことがポイント。
※こげつく場合は、少量の水を鍋肌にそって入れる。
※冷蔵庫で約5日保存可能。すぐに使わない場合は冷凍を。

「味わう」はとても奥深い言葉。今年も季節の移ろいを楽しみに、旬のものをたくさん味わいたい。自分がハッピーになる時間も味わいたいし、本もゆっくり味わいたい。そんな積み重ねをくり返すことで、味わい深い一年にしたいと思います。 

※春の養生については「 五十嵐和恵の季節に合わせた暮らし方Vol.1、5、11、16 」を併せてお読みください。

ポジティブ・エイジング アドバイザー、健康管理士一般指導員、食育インストラクター。福岡市出身。時間とともになんとなく年をとるのではなく、加齢に対して前向きに準備をしながら素敵な年齢を積み重ねてゆく=「ポジティブ・エイジング」を提唱。東洋医学のある暮らしでうつ病や難病も克服。お子さんからシニアまで幅広い世代の方に、セミナーや講演会を開催。福岡県立高等学校食育出前講座、西南学院大学市民講座などの講師を務める。

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