いま腸のバランスを整え健康を維持する「腸活」や「菌活」が話題の的。私たちの健康と美容をサポートしている「微生物」の働き。微生物は体の中だけでなく、空気、水、土などあらゆる場所に生息しています。
2025年3月、1967年から土壌微生物を研究してきた「金澤バイオ研究所」の金澤晋二郎(かなざわ しんじろう)所長が「『土』の本」を発売。学術書や研究論文ではなく、一般の人に向けてわかりやすく書かれた本です。
金澤所長は、2001年の「九州大学研究拠点形成プロジェクト」で提供したバイオ肥料が好評を得たことをきっかけに、退官後に研究室を立ち上げ、「土の薬膳」や「BIO SOIL」など実用的なものづくりをスタートしました。
「金澤バイオ研究所」金澤晋二郎氏
東京大学、鹿児島大学を経て九州大学大学院(農学部)教授となる。専門は土壌微生物、土壌生化学など。
退官後、同大学特命教授に。
第13回国際土壌科学会(西ドイツ)土壌生物部門最優秀賞受賞。
元サントリー「天然水の森」研究員。2015年に開催される国際学会「ICOBTE」理事長
「『土』の本」の“はじめに”では、「物質循環自然環境の要が土である たった地表表面の十八センチの薄皮みたいなこの土が、あらゆる地球の物質循環の要をなしている これがなかったら地球そのものが存在しない」とあります。平易に書かれた本ですが、その一文だけでこの本の重みが伝わります。
土の誕生から、微生物とはどんなものか、微生物が森の水を保ち浄化するしくみ、自ら開発した肥料で栽培したお茶の研究など、読者に寄り添う一問一答のインタビュー形式になっています。
また、フィールドワークを大切にしていることから、国内外のたくさんの事例も交えて説明されています。挿絵やコラムも楽しい!
土壌微生物研究から開発された有機肥料と土
農薬をたくさん使う農業から脱却したいという強い思いから発売された「『土』の本」。金澤バイオ研究のものづくりから生まれた、土壌微生物の結晶という肥料「土の薬膳」と「BIO SOIL」を紹介します。
「土の薬膳」と「BIO SOIL」で使われている原料はこの6つ
「土の薬膳」と「BIO SOIL」の原料には、牡蠣殻、アガリスク菌床、大豆おから、ビール麦芽粕、竹パウダー、そして栄養面で優れている米ヌカ、と直接食べられるものしか使われていません。ヒトの免疫力を高める成分を、超好熱細菌(HT菌)で発酵・熟成させています。
80℃以上の高温になる特殊な発酵製法は、病原菌や雑草の種子などを消滅させるので安心で安全。土に含まれる外来種の種子も発酵温度を上げて処理し、菌の働きで原料の分解も速く進み、臭いのないクリーンな堆肥や土ができるそう。
大豆のつぶつぶが見えます
食べられる原料が、微生物のエサになって土を健康にし、栽培植物の免疫力を高めていくといいます。微生物の菌体が多いほど、肥沃な土地になる。微生物の数が多いほど良いのは、土も私たちも同じ。
「一般の家庭まで安全で低価格にオーガニックが届くよう、健全な土を守っていかなくてはならない」と、有機資源を循環させる「地球の土を守る取り組み」が行われているのです。
「土の薬膳®︎」BIO肥料 500g:1,320円(税込)
バイオ肥料は約3年で有機物がまんべんなく大地に広がります。それによって農作物の大きさのバラつきがなくなり、結果として経済効果が高くなる効果が期待できるそう。
BIOSOIL GARDEN(2L):1,100円(税込)
本の最後の章には、「宇宙農業の可能性」について触れられています。それは遠い未来の話でもなさそう。
頻発に起こる大きな災害は、地球の循環がバランスを失いつつあるからではないかと感じます。地球の健康と未来について思いを巡らせる…ぜひ親子で読んで見えない微生物の世界を感じてみて!
金澤バイオ研究所 https://www.kanazawa-bio.com/
「土」の本 https://www.ele-king.net/books/011695/
オーガニックライフスタイルEXPO in 東京
会期:10月2日(木)~4日(土)
会場:東京都立産業貿易センター 浜松町館
*出展社募集中です
《関連キーワード》
バイオ肥料, 土の本, 土壌微生物, 宇宙, 宇宙農業, 循環
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |
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