決して気候変動だけではない、深刻化する地球規模の環境問題。本サイトでも度々取り上げてきた、海洋プラスチックごみによる汚染もそのひとつです。
2019年に開催されたG20大阪サミット。海洋プラスチックごみに関して、2050年までに追加的な汚染をゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が、G20首脳間で共有されました(参考:環境省「海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失」)。国を越え、官民の連携・協働による、あらゆる取り組みが求められています。
そこで、プラスチックのリサイクルを行う「株式会社セイコーインターナショナル」から4月2日に発売された、長崎県・対馬の漂着プラスチックごみ100%再生のプラスチックペレット※「Re:Ocean@TSUSHIMA」をご紹介します。
※様々なプラスチック製品の原料となる小さな粒
ビジネスの力で対馬の海をきれいにしたい
対馬の海洋プラスチックごみ
プロジェクトの始まりは、2023年2月にアウトドアメーカーの「パタゴニア」と登山アプリ「ヤマップ」が開催するスタディーツアーへの参加でした。
「対馬の海洋プラスチックごみを実際に目の当たりにし、メディアで観た映像よりも何倍も酷い状況であり、凄まじい数のプラスチックごみに衝撃を受けた」といいます。そして、「海ごみだらけの光景が哀しく、またそれだけの量のごみが放置されていることを“もったいない”と感じました」。
海岸にうちあげられたプラスチックごみ
廃棄プラスチックを再びプラスチックにするマテリアル・リサイクルを業務としている「株式会社セイコーインターナショナル」。ビジネスの力で対馬の美しい海に貢献できればと考え、商品化されたのが「Re:Ocean@TSUSHIMA」。対馬の漂着プラスチックごみ100%の再生プラスチックペレットです。
「株式会社セイコーインターナショナル」によると、対馬市は年間約2.8億円の予算を掛けて回収・処理を行っていますが、年回収量は全体のうち1/4程度の約8千立方メートルにとどまっており、すべての漂着ごみを回収・処分するために必要な予算が確保できていない状況にあるそう。
再生プラスチックペレット 25kg/袋
(カラーバリエーション:青色タンク、黄色ブイ、
白カゴ、黄色ブイ、赤色ブイ、オレンジ色ブイなど)
対馬に漂着したプラスチックごみを、ひとつひとつ種類と色ごとに分別し、再生プラスチックペレットに。
プラスチックペレットは、石油原料のナフサに柔らかくしたり壊れにくくしたりするために添加剤を加えたもの。このペレットから、私たちの暮らしになくてはならない、さまざまなプラスチック製品がつくられています。
売上の10%が対馬市へ寄付されています。2024年3月末現在で、対馬の漂着したプラスチックの約40tをリペレットしています。
北極でも南極でもマイクロプラスチックが観測されたという報告もあります。日本で、長崎県対馬市は、山口県下関市、石川県羽咋市に次いでプラスチックごみの漂着が多く70%を超えています(環境省の2018年調査)。生態系に及ぼす影響も懸念されています。
さらなる企業の参入により、リペレットされた「Re:Ocean@TSUSHIMA」を活かして循環していく、そんな魅力的なプロダクトの誕生も楽しみです。
「Re:Ocean@TSUSHIMA」URL: https://www.seiko-intl.com/reocean.html
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執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |