太陽の光が少しずつ生気に満ち溢れてくる季節。いろんなストレスがある日々でも、新春は自然の力をたっぷり閉じ込めた香りを身にまとい颯爽としていたい。
富山県・富山市のフレッシュオーガニックコスメメーカー「有限会社アンティアンティ」の自社ブランド「antianti organics(アンティアンティオーガニクス)」。商品の一つ一つがハンドメイドで、日本で初めてUSDAオーガニック認証を取得したコスメメーカーです。
「antianti organics」の自然科学に基づいた「美しさ」のキーワードは、水 “AQUA”と花 “FLOWERS”。天然香水には、調香師(MACOTT)さんの信念とこだわりが凝縮されています。ものづくりについて、そして時の経過と共に熟成していく天然香水について、お話をうかがいました。
長い年月をかけて友達になれた天然香料
「antianti organics」のコスメの特徴は、現代の自然科学と古来の癒しの伝統を融合してつくられているところ。そして、「薔薇」への強いこだわり。「antianti organics」には“発酵と熟成”の力を応用して、製品を安定・長持ちさせる独自の技術があるとか。
「使用しているUSDA 有機ローズウォーターは、普通であれば、ある一定の温度を超えると菌が発生して腐敗するのです。それを温度管理と冷凍を繰り返し濾過技術により製品化しています。原則、冷蔵庫で保存して使っていただくと、もう少し長持ちしますよ」
長年研究開発を重ねた結果、古来の知恵である“発酵と熟成”を応用した独自製法を生みだすことに成功し、ローズの有効成分をさらに高め、優れた天然抗酸化物質“ポリフェノール”を生み出すことができたそう。これにより、優れた天然の殺菌剤・防腐剤のような役割を果たすため、合成防腐剤をいっさい使わなくても製品が安定し長持ちします。同時に、素肌への抗酸化作用も期待できるのです。
固相抽出装置
食品基準のUSDAオーガニックは「安心して食べられる」オーガニック認証。USDAオーガニックは、石油由来の合成化学成分をまったく含まないことが約束されている世界でも数少ない認証のひとつです。さらに「antianti organics」では、厳しい独自分析も行われているそう。
「そうですね。自社のGCMS装置※1のヘッドスペースなどで分析しています。そして、官能評価※2を実施し検証を続けています。原料を世界の仲間、USDA有機生産者から購入していますが、認証が無くても優れているものを買います。それは、自社の分析技術と官能評価を確立した経験と自信があるからです」
※1 GCMS装置:主に有機化合物の定性・定量を行う装置。防腐剤・重金属・農薬といった人体に有害な物質が含まれていないかを確認する
※2 官能評価: 人間の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を判定する検査
MACOTT PARFUMS
限定熟成香水 /バーガンディーリリー (’21)
30mL パルファム フラコンボトル
40,700円(税込)
MACOTT PARFUMSについて、天然香料でつくる香水は調香が深く生命力があるので、脳に響いて心を安らかにしてくれるもの。天然の香りは、言葉を超えて脳に記憶されるロマンチックな分子なんだ…と、聞いているだけでうっとりした気分になります。ですが、実際にはたくさんの苦労を乗り越えながらつくられていました。
「天然香料と出会い35年です。ようやくお友達になれたような気持ちですが、まだまだだと感じています。同じ天然香料でも個性があり大変難しく、化学分析と官能評価の技術を磨くことが必要でした。一級品は高額で、資金力がないと調達出来ませんね。また、香料会社と親密な関係がないと優れた物が買えません。天然香料だけで香水をつくる例がまったくなく、独自の考え方で進めた結果、失敗の連続でした。薔薇とイリスは富山県で実際に栽培し、香料を抽出しました。費用は膨大にかかりましたが研究できたことに満足しています」
カシミアをイメージしたユニセックスな香り
MACOTT PARFUMS
限定熟成香水 /カシミア’21
5ml:8,800円(税込)
一般的に香りの持続時間はパルファム5~7時間、オードパルファム4~6時間、オードトワレ1~3時間と言われています。調香師(MACOTT)さんは、持続時間のことを飛行時間と表現されます。
「最初の香水は、表参道のアニヴェルセルの1階にあったお店で発表しました。初日に35,000円の香水を買ってくれたのは、フランスの女性とイギリス人でした。この時の香水の飛行時間は1時間程度。天然香水は熟成していないと長く香りません。感覚だけでつくっていた時期を経て、有機化学に導かれ研究を続けたことで進化していきました。良い香りだけど、長く香らないのが大変問題で、それを解決する事は簡単ではありませんでした」
MACOTT PARFUMS WHITE ROSE ’21
限定熟成香水 /ホワイトローズ’21
5ml:8,800円(税込)
100%天然の熟成香水は、上手に管理することで、まるでヴィンテージワインのように香りが変化していくそう。花々の収穫期や製造期によって香りや色み・テクスチャーにも微妙な個体差もあるとか。劣化させず、経年変化を楽しむような品質に仕上げる秘密は何でしょうか。
「まず1番クオリティの良いものを買います。これを香水の原料になるまで精製、熟成、分子蒸留、分析確認と官能評価をし、使える香料にします。かなりの時間がかかります。次にブレンドし香調を決めます。それから温度管理、テイスティングを繰り返したあと、冷暗所に1年から10年くらい保管し熟成させて仕上げるのです」
アンティークパルファムコレクション(MACOTTさんの私物)
工業的につくられた香りではなく、心地よく香る自然の本物の香り。以前、イスタンブールで「Rose Oil」という名目のものが、実はゼラニュウムと石油の混合物だったというエピソードも教えていただきました。
「antianti organics」のすべての商品は体内で自然分解され、使用後の排水も100%生分解されて自然に還るようにつくられています。自然環境で分解できないものは、体内でも分解できないもの。身体や環境に少しずつ影響を及ぼし、バランスを崩していきます。自然の香りの力で感覚を研ぎ澄まし、呼吸を深くして背筋を伸ばし毎日を過ごしていきたいと思います。
antianti organics http://www.antianti.com/
《関連キーワード》
USDA ORGANIC, 天然香水, 有機ローズ, 熟成香水
執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |