(画像提供:ふくおか食べる通信)
2011年の東日本大震災をきっかけに、会員制の定期購読誌「東北食べる通信」が創刊されました。その後、食べる通信を全国に広げるため「一般社団法人 日本食べる通信リーグ」が設立され、現在全国34の地域で展開しています。読者になると、生産者さんのストーリーが紹介された冊子と手がけた商品のセットが届きます。
さらに、地域の水産物や農産物の宅配と違うところは、生産者さんと読者が直接交流するネクストアクション。
食べる通信の農産物や食品は、オーガニックを問わず、生産者さんがこだわりを持ってつくっているものばかり。それぞれの地域の編集長が、生産者さんを伝える冊子は大きな魅力です。Part 1では、「ふくおか食べる通信」の編集長 梶原圭三さんに、冊子づくりや思いについて話をうかがってみました。
生産者さんをドキュメンタリーで伝える–「ふくおか食べる通信」–
「ふくおか食べる通信」編集長 梶原圭三氏
梶原さんの故郷は、福岡県朝倉市。福岡の中でも朝倉市は、江戸時代につくられた三連水車が稼働し、ブドウやナシなどの果樹園や農地が多いところ。都会からUターンして「ふくおか食べる通信」の編集長に就任されました。
食べる通信の仕事は、生産者さんに取材して記事にする「冊子づくり」、食べ物を仕入れ冊子と梱包し読者へ送る「発送」、生産者さんと交流する機会の「イベント」の3つあります。
隔月刊の「ふくおか食べる通信」の仕事のすべては、梶原さんが一手に担っています。
生産者さんのマルシェへの出店もお手伝い
たくさんのご苦労がありそうですが、楽しそうな話を聞かせていただきました。
「取材自体は一番楽しいのですが、生産者さんにインタビューした内容を、文字に起こすところが一番の苦労。伝記を書くつもりで、生産者さんを取材しています。」
それまでビジネス文書は書いたことがあるものの、人物を掘り下げて書いたことはなかったという梶原さん。日曜日の午後にゆったりと読みたいのに、文体がかたいというご指摘も。創刊号は悩んだそうですが、自分が書きたい世界を大事にしました。
「一人の生産者さんには、何度も会いにいきますね。フラッと立ち寄ったり、お酒を飲みに行ったり。小さい頃の話やお父さん、おじいさんの話までお聞きします。まわりには、必ず支えてくれる人がいるもの。一番は奥さんだと思いますが、ご家族にも取材します。そうすると、書きたいコトがたくさんあってネタには困らない…生産者さんに向き合う苦労といえば、そんなところかな。」
5号に登場したソバ畑
朝倉市では、2017年に九州北部豪雨で大きな被害を受けました。地域の生産者さんへは、まだ支援が必要な状況です。
甚大な豪雨被害を受けた朝倉市
「現地の被害について、都会では徐々に忘れられているようです。自分が経験していない災害を自分事にするのは難しいですが、自分事にできる人は、ボランティアなどに行って五感で感じた人など、実体験した人たちです。」
自分事になると、他人事のような応援や支援を超えて「支え合う社会」が自ずと生まれてきそうです。
「知っている人がつくったものを食べることを『知産知消』とよんでいます。顔と名前がわかる生産者さんに会って話をすると、感謝の気持ちも生まれますよね。食べる通信の目標は、お金の交換ではなく、顔の見える関係性の構築なんです。」
梶原さんは、自分がいなくても生産者さんと読者がつながってほしい、といいます。知る、食べる、会う、感じる、と食べる通信にはさまざまな体験が提供されています。そんな体験が多いほど、生活も豊かになりそうです。
執筆者:奥田 景子 ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。 |