メジャーではない品種や規格外など、市場に出回らなくても、味にはまったく遜色ないお魚が「未利用魚」として廃棄されている現状があります。いま、そんなもったいないお魚に、食品ロスの問題として目が向けられています。
「Fishlle!」を展開する「株式会社ベンナース」の代表井口剛志(いのくち つよし)氏
子供達に魚の美味しさや旬を楽しんでいただき、
もっと魚を好きになってもらいたいと出張授業も行っています。
日本各地で獲れた「未利用魚」をそのまま販売するサイトも登場。さらに、骨を抜いたり、こだわりの食材で味をつけたりと、ひと手間かけてミールキットとしてサブスクリプション販売しているのが「Fishlle!(フィシュル)」。この「Fishlle!」を筆者も購入してみました。
自然の恩恵を社会へ還したいという思い
加熱用と生食用6パック:5,390円(税込) ※お得な定期便は30%オフ
その他10パック、16パック
配送サイクルは30日~
四季がある日本で、野菜や魚はとくに旬を感じる食材です。旬の食べ物は美味しいだけでなく、その時期に必要な栄養素が豊富。でも魚料理は手間がかかり、火加減も意外に難しくて、つくる機会は減少傾向。また、骨があるため、子どもや高齢者には心配です。
「Fishlle!」では、サイズがバラバラで加工しにくい未利用魚の一尾一尾と向き合い、それぞれに合った味付けがしてあり、調理は簡単。ほとんど骨を抜いてあるため、短時間で美味しい料理が完成しました。珍しいお魚を食べられるのも楽しいところです。
井口さんと仲買人の島田さん(右)
「Fishlle!」のこだわりは、地域の生産者さんとのつながりにもあるそう。お魚の仲卸さん、有機調味料をつくる職人さん、一緒に味付けを考える料理人の方々。さらに、オーガニックハーブ、藻塩などの生産者さんとのつながりを大切にされています。そして、余分な添加物を使用せず特殊な凍結技術を採用。
いろんな種類の未利用魚
どのお魚も美味しそうです
水揚げしても食用に回せない未利用魚の量は、多い日には9割にものぼるとか。定期便には、未利用魚について、わかりやすく解説された冊子が付いています。知らないお魚の旬を知って、インスタにはたくさんのレシピも掲載。知識が深まり、自分でお魚を捌きたくなった人へ向けて、捌き方のYOU TUBE解説もありました。
青山学院初等部の給食に
家庭でお魚を調理する機会が減っている中、子ども達に日本の漁業の現状を知ってもらう機会をつくり、伝えるための活動もあります。SDGsプロジェクトのひとつとして、2023年3月から、青山学院初等部に月一回お魚を納品。未利用魚の給食と食育授業がスタートしました。
手作業で加工されています
仕入れから商品開発、加工、販売までのすべてを自社で行います。産地を訪ね歩いて、最高に美味しいと思った食材を買い付けているそう。「Fishlle!」は、関わるすべての人が幸せになるような、新たな水産加工業を提案しています。
なぜ、美味しいお魚が「未利用魚」となってしまうのか。規格や労働力、資源の問題もありますが、見た目や知名度の低い魚が弾かれる流通システム、調理方法が普及していないなど(参考:SDGs ACTION「未利用魚とは? 利用されない原因や注目の理由、活用事例を紹介)、消費者の立場から変えていける可能性もあるのでは。
捌き方と焼き加減もマスターしたい
代表の井口さんの「人は自然という共通の資源を共有しながら生きています。これからの時代は環境に配慮し、各個人が自然から受けた恩恵を社会に対して還元していかなければならないと私達は考えています。その積み重ねが、未来の孫達の幸せにも繋がっていくはずです」という思い。「Fishlle!」のコンセプトのひとつ「お魚を食べて社会貢献」は、私たちもその強い思いをつないでいく力になれることを示しているようです。
Fishlle!(フィシュル) https://fishlle.com/
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