自然と対話する農業。「maison KOIWAI」の自然栽培大豆や野菜でつくられる発酵・加工食品

長野県長野市で耕作放棄地を開墾した農地。「maison KOIWAI(メゾン コイワイ)は、その地で2011年から化学肥料・農薬不使用、堆肥や除草剤をまったく使わない自然栽培を行っています。さらに収穫された大豆や野菜から発酵食品や加工食品がつくられています。

自然栽培は地域の自然環境が違えば同じ栽培方法は参考にできず、収穫量が少なくなってしまいます。「maison KOIWAI」でも、収穫が安定してきたのは最近のことだと言います。まず、収穫量が安定してきた大豆から納豆がつくられました。そして新商品の「豆乳ヨーグルト・マメルト」を発売。

夏の赤大豆の畑

失敗を重ね、試行錯誤の連続だったという「maison KOIWAI」の古岩井厚志(こいわい あつし)さんへ栽培の様子と商品開発についてうかがいました。

熱を加える調理することで増す美味しさ

左から、えんれい大豆、黒豆、赤大豆

固定種で栽培されている大豆は、黄大豆の中でもタンパク質が多い「えんれい大豆」、「黒豆」、生産量が少なく幻の大豆と言われている「赤大豆」の3種。これらの大豆でつくられた「高級大豆納豆」の製造を行っているのは、2022年全国納豆品評会で優秀賞を獲得した長野県中野市の「有限会社阿部納豆店」。「maison KOIWAI」とのコラボ商品です。

えんれい大豆納豆 50g×4:1,360円(税込)
黒豆納豆 50g×4:1,810円(税込)
赤大豆納豆 50g×4:1,810円(税込)

大地や植物本来の力と向き合う「自然栽培」についてうかがいました。

「農薬・肥料・堆肥・除草剤・ビニールマルチを一切使用せすに栽培しています。いろいろな作物を栽培してきましたが、初めの3~4年はまったく育たない。出来たとしても取れる量は少なすぎる…。収穫も本当に大変です。何種類も野菜をつくれないし、全部同じ畑で収穫できるわけもなく。完璧ではありませんが草取りを徹底的にやらないと、さらに収穫量は落ちてしまいます。

でも、このような栽培方法だからこその美味しさは、あると思います。例えば作物には、寒さから身を守るために糖分を多くつくり出したり、虫から身を守るための苦い成分を出したり、生き残るための工夫があります。じつはそれが『美味しい』をつくり出す。現代の農業は作物を守り肥していく。そうではなくて、天然に近い環境をつくり作物の成長を見守るような自然栽培は『農業』と言う概念ができた時代の、まさに最も古い農法のように感じています」

収穫前の黒大豆
自家採取5年目・連作栽培6年目

毎年、加工した新商品をひとつ出すことが目標だそう。2022年に完成した植物由来の乳酸菌を使った「豆乳ヨーグルト・マメルト」は、長野県木島平村の植物性デイリーフード工場「global meets合同会社」と1年をかけ商品開発されました。豆乳をつくる際の温度管理、乳酸菌の選定、発酵の入りぐあいなど、最も美味しいバランスを探し出したもの。滑らかで濃厚な大豆の風味や旨味があり、乳酸菌の酸味を美味しく感じます。マメルトは、豆乳ヨーグルトというより、まるでナチュラルチーズのようです。

豆乳ヨーグルト・マメルト 90g×3:1,850円(税込)

プレーンタイプなので、はちみつをかけたり、ジャムをかけたり。一番のアレンジは、ご飯と混ぜて食べる「豆乳ヨーグルトご飯」。マメルトをご飯に混ぜ、塩と胡椒を加え、オリーブオイルをかけるだけでリゾットのような味わいに。プラントベースにこだわっている人に安心です。

黒豆のマメルトご飯

栽培からものづくりまで、喜びや原動力になっていることをうかがってみました。

「僕がつくったものは、生で食べて美味しいものが無いんですよ(笑)。自然栽培の農産物には、そのままでは結構クセや苦みがあるんです。それは多分、食べられないように野菜自体が自分の身を守るために、頑張っているから。そんな野菜は、普通の野菜より強いはず。それを確かな技術を持っている人に調理してもらうと、他の大豆とまったく違う。旨味を引き出してくれます。食べた人から美味しいって言ってもらえると本当に嬉しい!

野菜って変化するところが、すごく面白いんです。 僕のトマトは全然甘くないんですが、温度や火加減、調理時間によって甘味がでてくる。今、皆の生活は忙しくて、野菜は生でも食べられるように人工的に進化させられてしまった。火を使って料理する時間も減っているんですね。人間って、火を使えるようになったからこそ、食べ物が増えたのに…。自分ができることは、火を使う時間がないのであれば、自然栽培の野菜で無添加の加工品をつくりたい。自分でも研究して、安心安全を超えた『美味しい』を提供できることは喜びにつながり励みになります」

安心安全を超えた「美味しい」には、時間をかけ手間ひまをかけてつくられる美味しさもありそう。昔は当たり前にあった生活様式とゆとりのような感覚。

雪下にんじん

納豆は形を揃えるため丁寧に選別されていますが、「豆乳ヨーグルト・マメルト」は不揃いの大豆が使えるので、まったく廃棄ロスがありません。さらに2023年春は、雪の中で収穫した「雪下にんじんジュース」を販売予定。コンブのような香りがするというトマト缶も開発中です。

「人参ジュースやトマト缶にも規格外野菜を使います。大豆は2年間保存できますが、加工品の賞味期限はだいたい2年なので防災グッズとしてストックしても良いと思います。賞味期限が長いことは、無理のない作付け計画もできてメリットが多いですよ。自然栽培という持続可能な農業から、地球温暖化のこと、食の安全性など未来を考えるきっかけとして役にたてればいいなと思っています」

古岩井さんの故郷、長野の耕作放棄地で自然栽培を始めてから12年目。現在約1haの農地に、たくさんの作物が実っています。体が人それぞれ違うように、大地もそれぞれ違った特徴があります。それを対話しながら見極めていくような自然栽培。「maison KOIWAI」のパワフルな野菜から、パワフルな商品が生まれています。

maison KOIWAI  https://maisonkoiwai.com/

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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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