【SHOKAY】サステナビリティの挑戦。ヤクと共にある伝統的な暮らしを守る「チベット高原の緑化」

ヒマラヤの南斜面と草原地帯、過酷な自然環境にあるチベット。そこは、2019年まで特殊貧困地域が集中していたところ。「SHOKAY(ショーケイ)」は、チベットに住む人々のサステナブルな経済発展を目指すべく、2021年から「チベット高原の緑化」を行っています。

チベット語で「SHOKAY」とは「ヤクのやわらかい毛」という意味だそう。世界で初めて「ヤク」という素材にフォーカスした、日本でも広く知られているマテリアルブランドです。

広大なヤクの放牧地

古くからチベット人が家畜として放牧してきたヤクは、草の地表に出ている部分だけを食べる動物。そのため、自然環境に与える負荷は少なく、その地の生活様式に合っているものです。

一方で、チベットでもカシミヤブームによって過放牧された舌が長いカシミヤヤギは、草を根こそぎ食べてしまうため砂漠化を加速させます。以前より安く購入できるようになったカシミヤですが、砂漠化は深刻な環境問題であり、気候変動に陥る悪循環を生んでいます。とても持続可能とは言えない状況です。

ヤクは飼育農家の生活の一部

一度砂漠化が始まるとあっという間に広がり、元の状態に戻すには時間がかかります。各世帯のヤクを放牧している面積は広大で、その世帯だけで土地を回復させるのは非常に困難。そのためSHOKAYは、コミュニティで問題解決することがベストだと判断し、地元チベット人環境活動家ドラキョム・パルザンが主宰する現地NPO「Trachung Tsang 文化環境保護センター」と提携。緑化プロジェクトをスタートさせました。

20234月~5月プログラムはさらに拡大予定

ドラキョム・パルザン氏は、過去15年間、チベット高原が直面する環境問題について、地元や外部のコミュニティに対して啓蒙活動を行ってきた人。チベット人が地元の道具や種子、自分たちのヤクの群れを使い、土地の生物多様性を回復させるための方法論を開発しています。

チベット人による問題解決を目指して
草原に根を張りやすい地場産の種子をミックス

この緑化活動の意義深い点は、ヤクという動物を最大限活用しているところ。撒いた種をヤクが踏みつけ、土深くに定着させ、ヤクがフンをすることで大地は肥沃になります。さらにこの活動は、現地の若者の自立的な社会参加にもつながっています。

砂漠化が進んでいた場所

回復している様子

20225月、40人のチベット人が参加して、四川省ルオエルガイの86,666平方メートル(約26000坪)の土地の緑化に成功しました。

活動資金は、SHOKAYがこれまで収益の1%を基金として蓄積してきたもの。賛同企業には、SHOKAYのヤク素材を使用した糸をつくる世界最大級の紡績メーカー「UPW」。そして、SHOKAYのヤク糸を使用して2021秋冬コレクションを発表したカナダのサステナブルファッションブランド、Bコープ認証を取得した「Frank And Oak」も収益の1%をこのプロジェクトへ寄付しています。「Frank And Oak」では、サプライチェーン全体をブロックチェーン化し、透明性を高めています。ヤクに関わるメーカーとブランドが取り組みに関わっているのです。

ヤクから生まれたアイテム

収入を増やす機会が限られているというチベット。それでも経済に持続可能性は必須。地球の自然環境という視点から、4000km以上離れたチベットのヤクの状況と課題を身近なものと考える必要があります。ショッピングの時に素材や原材料を気にかけ、何を選ぶのか考えるだけでも未来は良い方へ変わっていくのでは。

 

参考:SHOKAYの緑化プロジェクト http://shokay.jp/magazine/2590

SHOKAYジャパンオフィス(ダブルツリー株式会社)https://shokay.jp/

 

 

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執筆者:奥田 景子

ライター(エシカルファッション、フェアトレ-ドなど)。福岡県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後スタイリスト。以降雑誌を中心にしたスタイリスト。社会的なことに興味を持ち、大学院で環境マネジメントを学ぶ。理学修士を取得。2013年から福岡を拠点に移してライターとして活動中。

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